起業する。商売を始める。独立する。どれも同じ意味かもしれないが、多くのビジネスは長く続かず消えていく。加えて、昨今は物価高で利益が出せなくなり、長く続けたビジネスを閉める話もよく聞く。
なぜそうなるのか? 一つは経営力だ。事業を始める人の多くは、やりたいことを形にしてビジネスをする。例えば「おいしい料理を作りたいから飲食店を始める」「社会課題の解決に役立つと思いアプリを開発する」「こんな製品があったらいいなと思ってモノづくりを始めた」など。「お金を儲けたい」という理由は誰にでもあるだろうが、それが一番の理由でない人も多い。
すると問題が発生する。おいしい料理を作りたい人は料理のプロ。アプリを開発する人は技術者。モノづくりを極めようとする人は職人。おいしい料理を提供し、世の中に役立つアプリを作り、優れた製品を生み出そうと日夜努力し、結果を出そうとする。
しかし、問題は誰一人として経営者になろうと思って独立、起業したわけではないことだ。加えて、彼らの多くは経営とは何かを学んだことがない。だから毎日必死に頑張って、その努力が実を結んでも、どこかで行き詰まることになる。
料理人は飲食店を経営したかったのか? アルバイトを雇ってシフトを組んでやりくりし、集客するために広告やSNSを活用したり、金融機関からお金を借りて毎月の支払いを滞りなく行ったり、役所の検査や認証を取ったり、税金申告をしたり…。さまざまなことをやらなければならないと、理解して事業を始めただろうか。多くがそこまで考えていたとは思えないし、その大変さを理解しているとは思えない。
おまけに毎日お店に立って働くので、経営について考え、経営計画を立てる時間はなく、どうしていいかわからないのではないか。
技術者は優れたアプリやプログラムを開発できるが、その販売方法や開発費の回収方法を理解しているのか? 事務所やパソコンなど最初に必要なものをそろえる際、どれくらいの期間で投資回収できるかのプランはあるだろうか。
職人も同じ。自分が作った製品を売るための工夫はどう考えているか。そもそも世の中が必要としているかどうかの市場調査はしたのか。最初にある程度の投資が必要で、資金力がモノを言うビジネスモデルだと理解していただろうか。
そんな考えでは、順調な時はよくても、現在のインフレのような外的要因が発生すると、予想以上に物価や人件費がかさんだり、コロナや戦争でどうしようもない状況になると、なす術なく翻弄されるだけ。最後には店を閉めることになってしまう。
起業してビジネスをすることはボランティアではない。永続的に経費を賄えるだけの売上を上げ続けなければいけない。そのためにはある程度の経営力や経営の知識が必要だ。にもかかわらず、そんなことは全く考えずに起業する人が多すぎる。
起業の失敗は、腕や情熱の不足ではない。経営を学ばないまま走り出してしまうことだ。
どうしようもない事情がある場合もあるが、どんな状況でも生き残っているビジネスがあるので、やり方はある。自分の状況を常に分析し、強みや弱点などを理解し、市場の動向を見極めるような経営の知識があれば、倒産や廃業の可能性はグンと下がるはずだ。

