「賃上げなら補助金を」のおねだり体質やめよ
日本は全産業の99・7%が中小企業で、労働者の68・4%が籍を置いている。大同生命が全国9000社にアンケートをした結果を見ると、「賃上げする」34%、「しない・したいができない」32%で、残りは「検討中」など。つまり7割の労働者は賃上げの恩恵に預かれそうにない。
理由としては、①景気の先行き不透明(69%)②業績低迷(29%)③借入金返済優先(14%)④内部留保優先(9%)⑤新規雇用優先(8%)と答えている。いまだにコロナ禍の業績低迷を理由に、「賃上げするなら助成金や補助金が必要」とおねだり体質も強い。
コロナ禍で業績回復が遅れ、休廃業が急増している業種はサービス業、小売業、建設業が代表的だ。製造業は自動化などが進んで生産性が向上しているが、中小企業の4割以上を占める飲食、小売り、生活関連、サービス業は非効率化が目立つ。
中小企業は世襲が多く、先行き不安な中で未熟な経営者は内部留保による守りに走りがちだ。実際に中小企業内部留保は79兆7000億円(00年度)から153兆1000億円(20年度)に倍増。そんな経営者に限って、跡継ぎ息子は最初カッコいい大企業に籍を置き、父親に代わっていきなり社長就任、または若くして役員に横滑りが目立つ。
本来の中小企業の良さは、経営者一族と社員の家族的連帯による風通しの良さ。それがある企業は跡継ぎも下働きを経験しているから、一般社員と気心が通じ合い、会社危機にも連帯して頑張れる。逆に北朝鮮のように封建的支配で社員に絶対的君臨し、トップの気分次第で労基法も無視した指示を出す会社には、もはやZ世代は決して寄り付かない。
要素技術をどう組み合わせるか
賃金が安い日本に、どんな将来が待つのか。まず外国企業が日本に生産拠点を置く。自国より低賃金で日本人が働いてくれるからだ。かつての日本がやっていたことだ。
つまり、狭い日本だけを見て値下げ競争をしていては、中小企業は生き残れない。高価値・高価格のサービスや製品を世界に提供していかないと勝ち目はない。
〝人間の欲望の力で豊かにする〟という資本主義の原則は、21世紀の日本で成り立たない。高齢者は何でも持っているから物を買わないし、若者は何でもシェアで、持たないことに慣れているので欲望を抱かない。
そんな時代の技術革新とは何か。全く新しい物を作るのではなく、「今すでにあるが、うまくつながっていない」ものをデジタルで組み合わせ、新たな価値を生むことだ。象徴的なのはiphoneだ。要素技術はすべて日本が持っていたのに、電話とパソコン、インターネットを組み合わせるアイデアが出なかった。
技術革新で残る仕事は、理美容や医師、タレントなどクリエイティブな職種だと思われていたが、最近ではchatGTPなるAIが登場するなど、文章や音楽、イラストなどのクリエイティブ分野も侵し始めたかもしれない。ただ、確実に言えるのはロボットなどITで代替できる職種は、人間がやる価値を生み出さないと残らない。
Z世代は仕事をどんどん渡り歩きスキルを上げる。40代半ばから50代の〝団塊ジュニア〟は沈みかけた船であっても、正社員という既得権益に這いつくばっている様子を見ると転職する勇気に欠ける。デジタル技術を取得させるなど国が学び直しを後押しして労働市場に送り返さないと手遅れになる。
防衛策は
では、この時代にできる自己責任的生活防衛策を考えてみよう。岸田政権は、財務官僚の言いなりで国民いじめの体質は変わりそうもない。年金改悪案を見ても、掛け金はなるべく多く長く掛けさせ、支給を遅らせて削る。
老後を年金だけで暮らせないから、国は「投資、投資」と声高になる。すぐにできるのは、今ちょうど受け付けている税務署での「確定申告」で、医療費やふるさと納税などを使って払い過ぎた税金を取り戻そう。預金の超低金利に比べ断然額が大きい。しかも後の住民税額にもリンクする二重にメリットがある。
最後に国のいう投資。金がない人はつい「イチか、バチか!」になりがちだ。投資の理想は、まず半分を低リスクで運用。3割を中ぐらいリスクでハイリターンな投資先を見つける。そして2割をゼロになっても我慢できるハイリスク投資に振り向ける。現役労働者世代は余力がないし、投資学習も不十分なので、投資そのものを定年後の新たなミッションとして考えるよう割り切る事だ。
嫌な言葉だが、それぞれが「自己責任」でのサバイバルを覚悟しよう。