【わかるニュース】物価急騰の中、なぜ増税 財務省悪だくみ、国民怒れ!

「防衛」「子ども」は増税のための理屈工作

 岸田総理の年頭会見の生活者に関わる部分で、目立ったのは「物価上昇を超える賃上げの実現」と「防衛費と少子化対策の予算倍増」だ。具体的な手だてとしては、物価と賃上げは経済界へ丸投げ。一方の防衛、少子化の予算倍増は、財源をどうするかについて表面的には〝先送り〟になっているが、政府税調から出て来るのは「国債を増発してまかなうのは無責任。恒久財源を」の言葉。つまり増税に他ならない。この背後に暗躍しているのは、紛れもなく財務省官僚だ。その裏側、メカニズムを徹底解明しよう。

内需低迷続く

 先進国の中で消費が減り続けている日本。デフレで給料も上がらない状況が長く続き、人々はすっかりお金を使えなくなった。品質の割に安い、時間的に安上がりを示す「コスパとタイパ」という経済キーワードがトップにあがることからも、日本の状況が見て取れる。

 さらにデフレ日本を、ウクライナ侵攻と円安による物価急騰が襲う。オイルショック(1970年代)のときは、年率20%も上がる狂乱物価だったが、あのときは35%の賃金上昇があり乗り切れた。しかし、今はどうだろう。賃金は横ばいどころか右肩下がりのマイナス。賃上げへの先兵だった労組の加入率は労働者の2割にも満たず、非正規雇用が4割。岸田総理の言う〝物価上昇に見合う賃上げ〟など絵に描いた餅にも映る。

 絶望的結論だが、私は日本の内需は何やっても上昇しないと見る。貯金と年金がある高齢世代の身の回りは生活用品であふれているが、持たざる現役世代はバブルを知らないから消費意欲自体にも欠けている。

 企業の方は、アベノミクスによる金融緩和でジャブジャブの金余り状態。大企業は内部留保446兆円、手持ち資金200兆円で海外投資への振り向けに熱心。 法人税の増税には十分耐えられるのに、日本社会と社員の生活を守る給与アップに向けず、株主の利益ばかりを追求している。

 そんないびつな構造の中で、増税議論が巻き起こっていることをまずは再認識しよう。

増税ラッシュの裏に何が?

 表を見てほしい。恒久財源として明らかになっている物を検証しよう。財務省の基本は「取りやすい所から取る」だ。

たばこ税引き上げ1本3円、1箱60円程度 健康志向から国民の抵抗少ない
炭素税新設CO2排出量に応じて製鉄企業などに課税 大義名分があり導入しやすい
道路利用税導入(自動車走行距離)ガソリン車が減るとガソリン税収が減るので、その代替
エコカー減税縮小エコカー減税は基準を引き上げ次第に縮小
退職金控除勤続年数一律にし税額増「終身雇用から流動性増加への配慮」
配偶者控除所得額を下げ税額増「共働き世帯への公平性」
相続・贈与への課税強化生前贈与非課税枠の撤廃や縮小
金融所得課税の強化株売り益や配当へ課税増
高齢者年金減額約20年で2割減。 さらに目減り
高齢者医療費増額後期高齢者医療費が昨年10月から引き上げ 75歳以上の5人に1人が支払い倍増。

 大企業は儲かっているので、最も肝心な法人税の増税が4~4・5%の上乗せ。所得税も持つ者、いわゆるお金持ちに対する富裕層税率を引き上げと、一見もっともらしい。しかし、実は裏にカラクリがある。

 まずは法人税。財務省は「日本の法人税は欧米に比べて高い」と宣伝しているが、本当にそうだろうか。なぜなら大企業には「輸出企業優遇税制」や「試験研究税制」などの抜け道があり、実は実質の税率は低くなる。ここは税率をアベノミクス以前に戻し、企業の設備投資を促す税制を設けるだけでかなり効果があるが、財務省は知らんぷりをしている。

 所得税の増税も、所得の多い人ほど税率が高くなる累進課税を強化すれば、納税額はもっと増えるはずだが、実は確定申告の時に複数の控除を申請することで、実際には額を抑えられるのだ。いずれも「問答無用」で天引きされる庶民は知らない仕組みだ。

消費税は〝打ち出の小槌〟

 増税の〝本丸中の本丸〟は消費税だ。10%になった時、安倍総理は「今後10年間は上げない」と約束。岸田総理も一昨年の党総裁選では同じ発言をしていた。

 ところが、財務省の息の掛かったメンバーで固める政府税調は、防衛費や少子化対策に目を付け、「(ずっとお金が必要になる政策には)恒久財源が必要」と消費税を念頭においた増税を主張し始めた。

 財務省は消費税について「景気に左右されず安定した財源」「薄く広く課税されるから経済的に中立な税金」と主張しているが、真っ赤なウソだ。常に天下り先を求めるキャリア官僚の本音は、自分たちが天下る大企業を標的にした法人税より、もの言わぬ一般庶民を標的にした消費税の方が都合が良いからだ。つまり、いつものように〝取りやすいところから取る〟のだ。

 すでにIMF(国際通貨基金)は「日本は2030年までに消費税15%になる」と見切っている。

 ついでに「日本の消費税10%は欧米に比べ低い」という財務省の主張もウソであることを証明したい。実はコロナ禍で、ドイツは16%(以前19%)、英国5%(同20%)と消費税は引き下げられている。米国も州ごとに税率が異なりゼロの州もある。一方の日本はどうだ。コロナ禍で苦しんでいるのに、政府与党は消費税の引き下げどころか、検討すらしてい ない。

財務官僚が牛耳る国政

 防衛費、子ども関連費に加え、「増額3兄弟」と呼ばれるもう一つにグリーントランスフォーメー ション(再生可能エネルギー転換)がある。一度付けた予算から支出を減らそうともせず、中身も論議せずに金額だけ先に決めるから当然増え続ける。

 いずれも財源問題は「24年度以降の適切な時期」とあいまいにしておくことで、現時点では財務省も満足している。財務省としては増税への可能性だけを示してくれれば、一歩前だからだ。

 国民が苦しんでいるのに、なぜ財務官僚は「緊縮財政と増税」を掲げ続けるのか。財務省は省庁の中の省庁であり、財務省を親会社に例えるなら、他の省庁は子会社。官僚中の官僚でエリートだけが集まり、入省後は財務省権限と省利益を守る人間だけが立身出世する。そうやっ天下り先を増やしてきた。防衛費だろうが、子ども予算だろうが、財務官僚にとっては、実は増税できれば項目などは何でもよい。

 最後に財務官僚が政治家を落とすテクニックを紹介しよう。標的は二世、三世の議員。これらポッと出の議員のもとに、東大卒の彼らが日参三拝四拝しながら言う。「センセイは選挙に強いから他の議員と違う。目先の票ほしさに減税を言い出さない立派な方。百年先の国家大計を見据え、財政再建をやり遂げられるのはセンセイだけ」とおだてまくる。そして、この議員の地元の事業にふんだんな予算を付ける。これで世襲議員はイチコロだ。その典型は、かつては積極財政論者だったはずの元財務相、麻生太郎・自民党副総裁。今では財務省ベッタリの代表格と言える。

 わが国は財務省エリート官僚が政・官・財の3界全てを横断的に生耳っており、一般庶民は塗炭の苦しみがずっと続いている。この状況を打ち破るには、わたしたち一人一人がこの構造を知って、表面的な「うまい言葉」に騙されずに、まず4月の統一地方選で票を投じることだ。われわれ無関心であればあるほど、彼らはやりたい放題になる。