パキスタンが気候変動の最前線にいる国だということを、どれほどの人が知っているだろうか─。同国の温室効果ガス排出量は世界の1%未満にすぎない。にもかかわらず、2022年にはモンスーンによる豪雨の影響で大規模な洪水に見舞われ、国土の約3分の1が浸水。人口の15%におよぶ3300万人が被災し、1700人以上が命を落とした。国内のインフラも甚大な被害を受け、経済活動は大きく停滞した。

こうした現実と向き合うため、パキスタンは5月16日、大阪・関西万博で気候変動に関するパネルディスカッションを開催。同国の専門家や駐日大使らが登壇し、「一国だけでは何も変えられない。世界全体で努力することが重要」と国際協力の必要性を訴えた。温室効果ガスの排出量を取引する「カーボンクレジット」の導入についても紹介され、具体的な対応策が語られた。
会場には大阪大や京都大など関西の多くの学生が参加。パキスタンからの留学生も目立ち、真剣なまなざしで耳を傾けていた。進行はすべて英語で行われ、通訳に頼らない日本人学生の姿も多く、質疑応答では次々と質問が飛び交い、会場は熱気に包まれた。
万博では地球規模の8つの課題に対し、国際的な対話を通じて解決策を探る「テーマウィーク」が展開されている。