
サントメ・プリンシペ民主共和国と聞いて、「知ってる」という人はまずいないはず。同国の方も「誰も知らない」と言う。
同国はアフリカ大陸の西側の沖合に浮かぶ2つの島からなり、ポルトガルから1975年に独立した人口22万人の小さな国。首都も世界一小さい首都と呼ばれているそうだ。
特筆すべき産業はなく、世界最高品質のココアを生産し、それで作られるチョコレートは世界一の称号を受賞したこともある。しかしそれ以外語るものは少ない。

「だからこそ、皆にサントメ・プリンシペのことを知ってもらいたくて参加した」とは先のスタッフの言葉。

多くの人は農業に勤しんでいるので都心部には住んでおらず、自然と共存する形で生活している。電気やガスも通っていない場所も多いらしく、洗濯は川へ行き、タライと洗濯板で手洗いしているという。
普段の生活を現した絵が飾ってあり、なんとなくその風景が想像できる。頭の上にモノを乗せて運ぶ女性や学校へ通う子どもたちなど。ちなみに小学校は義務教育で、多くは中学校までの教育は受けているそうです。
「もし、私がサントメ・プリンシペに移住したらいくらかかるか?」と訊いてみたところ、海沿いの家は3~4000ユーロで購入でき、ガスや電気のある生活で月200ユーロ程度あれば大丈夫とのことだった。ただし、時々停電するのでそこは受け入れざるを得ない。

コモンズ館に参加している国多くは、自然と共存した国で、自然を軸にした観光や産物をPRしているが、同国はその中でも国土に占める手付かずの自然の割合が一番多く残っているように感じた。近海に生息する海ガメの保護活動なども行っている。
またアフリカ大陸のそばに位置しながら、ヨーロッパでもアフリカ大陸ででも知られていない、というその現実をこの万博という機会に打破して一人でも多くの人に同国について知ってもらいたい、という節なる思いも強く感じた。
ビデオでは美しい自然や地元の食、文化などが紹介されていて、その中でもこの国出身のアーティストの奏でる音楽とそのミュージックビデオが流れるが、ヨーロッパで活躍しているというだけあってポップで聴いていて楽しい。しかし音楽の原点は同国のものを生かして作曲されているそうなので、この曲はサントメ・プリンシペの音楽だという説明だった。

また、同国のカカオ生産業を名古屋のカフェタナカが支援しており、同社はこの最高品質のカカオを使ったチョコレート菓子を販売していて、会場内でも期間を区切って販売している。

いろんな意味で、訪れてほしいパビリオンだ。