生まれた時から目が不自由で漫談のピン芸人として活動する濱田祐太郎(35)が30日夜、なんばグランド花月(NGK)で上演される「盲目のお蕎麦剣士が巻き起こす新喜劇」で座頭市ばりの盲目の剣士役に挑戦する。時代劇中に欠かせない大立ち回りでの殺陣は、人数が多い上にとがった金属製模造刀を振り回すため晴眼者でも危険が伴う困難な芸。「慣れない姿勢の上すり足で動くため足腰がパンパン」と笑う濱田に意気込みを聞いた。

兵庫県立視覚特別支援学校で三療(はり・きゅう、マッサージ)の国家資格を取得。卒業後はマッサージ師のアルバイト活動を経て、目が不自由な自分ならでは独特の体験談を笑いを交えて語る芸風で「R―1ぐらんぷり」チャンピオンに。現在では時事問題をテーマに語る漫談や漫才劇場の仲間と共にゲームバラエティー実演などでタレント活動している。

新喜劇の間寛平GM(75)とたまたま同席した際に「つえで舞台中をたたき回る寛平じいちゃんのキャラが好き。僕も絡めないですか?」と直訴したのがきっかけ。GMから「本気でやる気あるなら、座頭市みたいな盲目の剣士を演じてみないか?」と誘われ、未経験の濱田は戸惑いながらも応じた。
一件無秩序に見える時代劇立ち回りは、実際は殺陣師による順序立てた細かい振り付けを全員で確認しながらの綿密なリハーサルが必要。東映京都撮影所でスタントマンとして殺陣の経験がある新喜劇座員の平山昌雄(50)が付きっきりで指導。周囲が見えない濱田のために6パターンの立ち回りをダンスのように体で覚えてマスターさせ、白刃を交える相手役が動いて対応する型を取る。

濱田の役は盲目のそば屋店主。彼を優しく見守る宿屋主人に寛平GMが出演。悪党の親玉を平山が演じて舞台を盛り上げる。他に辻本茂雄やレイチェルらが出演。立ち回りには東映京都撮影所の剣会メンバーも駆け付ける予定。
濱田は「僕は生まれ付き見えないので声や足音で相手役に位置を確認するしかない。本格的なお芝居自体が初めてなので、広いNGKの舞台で立ち位置を間違えないように漫才劇場の仲間の〝もも〟のまもる。くんが、そば屋の手伝い役で付き添って、連れて行ってくれることに」と話す。

問題の立ち回りのけいこも大詰めに。「普段、白杖を使って街を歩く時は、人や物に当たらないよう自然に腰を引く。ところが立ち回りは腰を落としてすり足で移動。これまで経験のない体勢で、もう慣れましたけど下半身が疲れる」と告白。平山は「濱田君は大変な努力家。教えたことは次の稽古までに完全にマスターしようとみっちり練習してくる。僕も初めての経験で勉強しながら徐々に完成に近づいている」と手応えを感じている。
濱田は「僕もNGKの大舞台に立ったことがあるがこれまではピン芸が中心。今回は多人数の新喜劇に慣れない僕が入れて頂くので、前日の舞台稽古までずっと緊張し放しです」と新たな挑戦に意欲を燃やしている。
(畑山 博史)