
大阪市此花区の人工島・夢洲(ゆめしま)で4月24日、日本初の統合型リゾート(IR)の起工式が行われた。カジノを含む大規模複合施設で、2030年秋の開業を目指す。国家戦略特区として国が認定した唯一のIR計画で、正式に建設が始動した。
夢洲に広がる期待と戸惑い 暮らしと文化の行方は
事業主体は、米MGMリゾーツ・インターナショナルとオリックスによる合弁会社。5月9日には社名を「大阪IR株式会社」から「MGM大阪株式会社」に変更した。ラスベガスのカジノホテル「MGMグランド」などを運営するMGMリゾーツのブランド力を前面に打ち出し、国内外の知名度向上を図る。
施設は敷地面積49㌶で、カジノのほか、3棟のホテル、6000人規模の国際会議場、商業施設などを備える。総事業費は約1兆2700億円。年間約2000万人の来場と5200億円の収益を見込み、そのうち470億円超が大阪府・市に納付される計画。約1万5000人の雇用創出も見込まれている。
起工式には大阪府・市の首長や観光庁幹部ら約150人が出席し、吉村洋文知事は「世界に誇る観光拠点を築く」と意気込みを語った。
一方、地域住民からは「にぎわいは歓迎だが、暮らしや景観が損なわれないか不安」との声も上がる。地盤の安全性、災害時の避難体制、鉄道延伸を含むインフラ整備の遅れ、ギャンブル依存症対策への懸念も根強い。隣接する大阪・関西万博との調整も必要で、巨大開発が地域文化とどう共存するかが問われている。