飼い猫の不調 AIが判定 スマホで撮影 表情から病状分析

 ペットと言えば、「犬」「猫」を連想する人が多いが、飼育数では猫が圧倒的に多いことはご存じだろうか。ペットフード協会(東京都千代田区)の調査によると、犬の飼育頭数は減少傾向にある一方、猫は増加している。

スポンサーリンク

〝痛み隠す〟習性 約7割が十分な医療受けられず?

 ペットフード協会(同千代田区)が発表した全国犬猫飼育実態調査2024年によると、犬の飼育頭数は前年4・8万頭減の約679万頭と右肩下がりである一方、猫の飼育頭数は同年比8・6万増の約915万匹だったことが分かった。そんな猫オーナーにとって、またとないサービスが誕生した。
 飼い猫の顔をスマホで撮影するだけで、AIが分析し痛みを患っているかどうかが分かるアプリ「CatsMe!(キャッツミー)」だ。顔写真をアップロードすると「痛みなし」「少し痛みがある」「痛みがある」の3段階で判定してくれる。結果をカレンダーに記録したり動物病院を探したりすることができる。

猫の痛みを検知するアプリ「キャッツミー」の画面
猫の痛みを検知するアプリ「キャッツミー」の画面

 サービスを提供するケアロジー(東京都中央区)は、日本大学生物資源科学部獣医学科と共同研究を行い、外科手術前後の猫の顔データ6000枚をAI技術を駆使して学習させたところ、90%以上の精度で猫の痛みを判定できるようになった。再学習させ、現在95%の精度を誇るという。

 開発には、猫の表情変化に注目したカナダ・モントリオール大学の論文「FELINE GRIMACE SCALE (フィーライングラミススケール)」に着想を得たことが背景にある。
 猫の痛みを見分けるポイントは大きく耳・目・口元・ヒゲ・頭の位置の5つ。痛みがあると耳が後ろに倒れることがあるなどの症状をスコアリングし、痛みの有無や程度を指標することで、猫の生活の質向上を図ろうと研究を進めたという。崎岡豪代表は「臨床現場の肌感覚では、約7割の猫が十分な医療を受けていないと言われている。この状況は、猫が痛みを隠す習性を持っているため、飼い主が猫の不調に気づきにくいことが一因」と話す。

 2023年夏にデータテストとしてリリースしたところ、世界中からアクセスがあり、現在、50カ国、約30万ユーザーが利用している。今年の初頭には、これまでウェブサイトだったサービスをアプリ化させた。

人でのAI開発で障壁に直面

 猫に特化したサービスを提供する同社だが、猫好きが高じて開発したわけではない。崎岡代表は大学卒業後、米コンサルディングファーム「EY-Parthenon(パルテノン)」でM&A支援に携わった後、医師の河本直樹氏と、AI技術を活用して医療の課題解決に取り組もうと同社を立ち上げた。
 しかし、AI医療分野は個人情報保護法の観点からデータの取得や利用が難しく、ハードルが非常に高かった。こうした中で、ある展示会に出展していたところ、獣医整形外科の第一線で活躍する日大枝村一弥准教授の目に留まった。「猫に活用できないか」。そこから、研究を共同研究を行ってきた。
 崎岡代表は「正確なデータはないが、世界中での猫飼育数は約6億匹とされており、開拓できる余地が十分にある。同時に『キャッツミー』は体温計のように、飼い主が早期に適切な対応を取る手助けになれば」と意気込む。
 同アプリは基本無料。広告非表示や多頭登録したい場合は有料。

「キャッツミー」アプリの2次元バーコード
「キャッツミー」アプリの2次元バーコード