私と同じ大学生世代の若者は、どれぐらい政治に興味があるのか? 与党過半数割れの総選挙、県議会全員一致で不信任の兵庫県知事が出直し選で再選。昨年、メディアで大々的に繰り広げられた予想外の政治転換を見て、猛烈に政治への興味がわいた。折しも私が住む大阪府四條畷市で、8年前に28歳で初当選した東修平市長(36)が2期8年で勇退。後継候補選考に「公募制」を採用、昨年12月の投票日にはタブレットを使った「電子投票」システムを取り入れるという。地元有権者の1人としてその一部始終を見聞きしてみた。(大阪国際大学/若原栞里)

まずは、取材当時現職の東市長に直接会った。「学生の取材には必ず応じる。10代、20代が政治に関心を持つことは将来に向け大切」と話してくれた。地元出身で四條畷高から京大工学部、同大学院へ。外務省をへて野村総研とその経歴は輝かしい。
公募も電子投票も「市民が私を信頼してくれているからこそ成り立つ。これはとても大事。しかし信頼されていると新しい提案が何でも通りやすい。実はそこに危険がある」と独断専制に走る事を避け、自ら多選への道を絶ったそうだ。「自分の事は自分が一番気付きにくい」と平然と言う。絶大な権力を得ても執着せず次の人に道を譲る。正直、今の私には理解できない。権力とは持てば持つほど周囲はイエスマンになっていく、とも言われた。
公募や電子投票は話題になり関心を呼ぶ。「ルールや制度が変っていないのに〝選挙に行って〟と言われても、投票するきっかけにはならない。市民が〝市長は誰がよいのか?〟を議論することで自分の住んでいる町に目を向けることができる」と考えたそうだ。

全国から約200人の応募があり、立候補予定者としていったん別の人が決まったが病気を理由に辞退。最終的に公募者の中から元市職員の銭谷翔さん(36)が選ばれた。対抗候補は市議を辞して出馬の渡辺裕さん(50)。私は選挙期間中、市内を歩いた。銭谷候補の対話会では私のような学生はほとんど見かけない。候補者と同世代が小さい子ども連れで訪れ、高齢者世代も目立った。東市長も付きっきりで応援し、ユーチューブ動画にはさまざまな世代が登場していた。対する渡辺候補は5期途中18年間の市議実績を生かし独りで自転車を漕ぎ地道に町を移動、市民と握手して対話している姿が印象的だった。結果は銭谷さん9989票、渡辺さん8891票で、銭谷さんが1098票差で勝利するも予想以上の接戦だった。
電子投票導入の成果は開票場が縮小でき、開票事務要員を前回の3分の1まで減らしても確定得票発表時間は20分短縮できた。タブレットによる投票に大きなトラブルはなく、私を含めた有権者市民も新しいシステムにすぐ対応出来たようだ。
しかし投票率は42・54%と前回の44・45%を下回った。当日有権者数も前回4万5696人から4万4901人に減っていることを併せ考えると「市民の市政への関心が高まった」とは単純には言えない。
四條畷市は生駒山系西側のJR学研都市線・忍ケ丘駅周辺と山系東側の近鉄奈良線沿線の田原地区に新しい住宅街が分かれ、旧市街がJR四條畷駅周辺と多面性がある。しかも大規模商業施設イオンモール四條畷を抱え市外からの来訪者も日々多い。それでも少子高齢化に伴う人口減少は他市と同じように避けて通れない。 私は今回の市長選で感じた政治への関心を、ふるさと四條畷をよりよい町にするために生かしていきたいと思う。