音楽を志す者たちに、夢と新たな生き方を提唱 ナラセ・ミュージック・アカデミー

代表の平田祐也さん

 音楽を続けたい。でも、どうやって? 人生をかけた〝自問自答〟に解を見つけた人がいる。音楽スクール「NARASE MUSIC ACADEMY(ナラセ・ミュージック・アカデミー)」を率いる平田祐也さんだ。

 ライブハウスで働きながら音楽活動を行なっていた平田さんに、転機が訪れたのが2020年。コロナ禍でライブ活動は阻まれ、会場も閉鎖。当時30歳。音楽どころか生活そのものが立ち行かなくなった。

 悩んだ末に始めたのがボイストレーニングの講師業だった。口コミで集まった生徒は7人。自ら営業を重ねるうち、半年で70人にまで増えた。収入はコロナ前の約3倍。音楽で生きる術をつかんだ瞬間だった。「ミュージシャンは音楽以外のことに疎くて。売れずに、音楽を辞めていく仲間は多い。僕もそうなる寸前でした」と平田さんは振り返る。ただ「音楽を嫌いになりたくない」一心だったと回想する。自分はボーカルしかできないが、ドラムやギターを教えられる仲間がいる。会場は間借りでなんとかなる。レッスン規約や時間割、キャンセルポリシーなどはすべて手探りで整えていった。

 そんな同校も今や生徒150人以上、法人15社と取引を行うまでに成長した。レッスン内容を記録する「Nカード」や、声の変化を可視化するレコーディングボイトレ、ペアレッスン制といった仕組みが好評だ。

 「昔の自分なら講師業は逃げ道だ、ダサいと思ったはず」と平田さん。だが今は違う。「音楽を続けていなければできなかった講師業のおかげで好きな音楽を続けられて、自分を肯定することができました」。だからこそ、他者にも音楽を続けられる環境を提供したいと笑顔を見せる。

 26年1月、目標のひとつだった実店舗がついに完成する。音楽をあきらめなかった平田さんの生き方は〝音楽好き〟の新たな道標となるだろう。(西村由起子)

1月10日オープンの天王寺本校
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