関西ではお笑いコンビ「Wヤング」平川幸男(2019年、78歳で死去)の長男の方が通りがよい演歌歌手、秋岡秀治(58)の新曲はズバリ「西郷隆盛」。日本の夜明けを導いた英雄の存在は余りにも有名だが「今、なぜ西郷さん?」から聞いてみた。
秋岡のトレードマークは全長6㍍の巨大キャンピングカー。3年半前のコロナ禍当初に購入し自らハンドルを握り現在の住まいがある東京を起点に全国を駆け巡った距離は既に10万㌔。当時は感染拡大防止の非常事態宣言が発令され仕事移動もままならぬ状況下。「車内にベッドやシャワー、トイレはもちろん。テーブルやパソコン、テレビに冷蔵庫も完備。歌の仕事先では衣装への着替えもできますから」とコロナ騒動が明けた今では手離す気がない相棒だ。
曲との出会いは偶然だった。鹿児島在住のシンガー・ソングライター、川井田健一さんが自作し歌った「西郷隆盛~あぁ幕末の薩摩武士」と「お墓参りに帰ろうか」を耳にする機会があった。「僕の演歌は男女の〝ほれた、はれた〟が多い。こういう歴史物はほとんど経験がなく新鮮でした。カップリングは故郷の両親の墓に参る男を描いた作品でしたが〝お墓〟という言葉を題名に使った曲を聴いたことがない。私に合わせアレンジは少し変えましたが、詞と曲はほぼそのまま使わせて頂きました」と話す。
難問もあった。今回の西郷さんは一般的イメージが強い江戸城無血開城や西南戦争の晩年からかなりさかのぼって青春時代のエピソード中心。「ネットや本で〝若き日の西郷〟を勉強し直しました」と笑う。「西郷さんは英雄ですからスケール大きく歌い上げるのがコツ。お墓参りの方がカラオケ好きからは好評です」と分析。
当然、ご当地の鹿児島やお隣宮崎を訪れる機会が増えた。「僕はフェリーが苦手なので、南九州方面は車で片道2日掛け移動します。高速道を走る車中でカラオケを使い思い切り歌唱練習も出来るし、疲れたらパーキングエリアに停めて仮眠。途中で土地の食材を買って自分で料理して食べるのも楽しみの一つ」と事務所ごと移動しながら仕事をこなしている感覚。
「どんな田舎でも駐車場さえ確保して下されば行きますよ。むしろ大阪や名古屋など大都会の方が停める場所探しが大変。大型車が置ける場所を確保し、市街地は電車移動です」と笑う。
歌手を目指していた父親譲りの歌のうまさでプロ歌手になり今年は35周年の節目。「おやじが七回忌、おふくろは十七回忌なんです。静岡の先祖代々の墓にお参りしてます」としみじみ。「実は30周年の時に全曲集CD2枚組アルバムを出したんですが、コロナでほとんど販促できないまま。いい仕上がりなんで、35周年で改めて皆さんにぜひ聞いて頂きたいです」と思いを込めた。
(畑山博史)