芸能生活30周年同士の春蝶と浅田あつこが国立文楽劇場でコラボイベントを開催

 同時期に芸能生活30周年を迎えた東京で活動する上方落語家・3代目桂春蝶(49)と在阪の演歌歌謡曲歌手・浅田あつこ(52)が、大阪・日本橋の国立文楽劇場で「『道行き』の世界」と銘打ったコラボイベントを開いた。

月下美人がデザインされた浅田あつこの着物

 まず春蝶と同じ3代目桂春団治(2016年、85歳で死去)門下の総領弟子で、上方落語界の最長老・4代目桂福団治(83)が2人の30周年を祝う口上で幕開け。まず浅田が露草色の着物姿で登場。30周年記念曲「道行き」を情感たっぷりに歌った後、「心中をテーマにしていますが、愛する人と一緒に死を選ぶのではなく『私は生きることをあきらめない』という強い気持ち、そして〝生きる権利と命の尊さ〟を歌っています」と詞が内包する力強さを紹介。

 その着物のデザインと製作を手がけた大阪府立泉尾工業高ファッション工学科の春名姫樺さんを交え、モチーフとして描かれた月下美人製作に用いたタフティングと呼ばれる打ち込み技工の部分を示しながら説明。同高で同様にデザインと製作を担当した真っ赤なドレスに着替え再登場。担当した生徒らを前に浅田は「彼女たちの前向きな気持ちがいっぱい詰まっているので、着ていると気持ちが優しくハッピーになれます」とにっこり。同科作品が今夏の「全国高校ファッションデザイン選手権(ファッション甲子園2024)」でグランプリを獲得した事なども紹介された。

浅田(左端)が着ている真っ赤なドレスのデザインを担当した高校生が苦労談を披露

 春蝶は古典落語で心中を素材とした「星野屋」を口演。かなわぬ悲恋を憂うだけでなく、人間の業をコミカルに描き観客の笑いを誘った。福団治、春蝶と浅田の3人で〝心中〟をテーマにトーク、今回の企画発起人で「道行き」を作詞したもず唱平(86)も参加。詞に込めた思いを「世界は今、人類心中に向かっている。でも何とか生きていかなアカン」と前置きし「まず1対1でしっかり生きていかな。

身ぶり手ぶりで高座を熱演する春蝶

 〝皆さん頼んまっせ〟の気持ちをあつこさんに託しました」と熱っぽく。最後は春蝶が「40周年、50周年を目指してお互い頑張って行きましょう」と浅田に語り掛け、観客とともに大阪伝統の手締め「大阪締め」を打った。

作詞家・もず唱平(右から2人目)を交えたトーク。右端が福団治、左端が春蝶、その右隣が浅田


(畑山 博史)