相続した土地「手放したい人」の土地国庫帰属法 創設から3カ月、承認ゼロ

今年4月下旬に創設された「相続土地国庫帰属法」。8月16日時点で承認・不承認となったケースはまだない。

 法務省は所有者不明土地の発生予防と、利用の円滑化の側面から、民事基本法制の見直しを図っている。

 その一環で、相続した土地の「使い道がない」「管理が難しい」などの場合に、国に引き渡す制度、「相続土地国庫帰属法」が4月27日に創設された。8月16日時点で承認・不承認となったケースはまだ1事例もない。

 要件として、「権利関係に争いがある」「担保権等が設定されている」「建物や工作物等がある」は土地対象外としている。そのほか、「土壌汚染や埋設物がある」「危険な崖がある」「通路など他人によって使用される」土地も不可としている。

 承認された場合、負担金が必要となり、10年分の土地管理費相当額の納付となる。例えば、市街化区域、用途地域が指定されている地域(一部の市街地)の宅地では、100平方㍍で約55万円。農用地区域の田畑は1000平方㍍で約110万円。森林は3000平方㍍で約30万円。それ以外は面積に関わらず20万円。

 法務省によると、7月末時点での相談件数は1万2000件。審査中は700件に及ぶ。問い合わせ内容は「概要を教えてほしい」といった相談から「書類を作ったので見てほしい」「地図や写真を持参して申請できるか判断してほしい」などさまざま。

 そのうち、大阪法務局での相談件数は、200件超。審査中は、8月16日時点で2件。担当者は「相談者は大阪府内に住んでいて、土地は大阪府外の地方にあるケースが多い」と話す。

 審査手数料の金額は、土地一筆当たり1万4000円。手数料の納付後は、申請の取り下げや、不承認となった場合でも返還しない。

 土地国庫帰属法は、土地管理費などの費用がかかるため、最終手段と考えているケースがほとんどだろう。さまざまな土地の要件がある中、活用されるのか注目したい。
(加藤有里子)

負担金算定の具体例(法務省資料より)