人口14万人突破 〝選ばれる街〟箕面 行政、鉄道、商業、住宅の4者が語る、まちのポテンシャルと将来展望

 地下鉄御堂筋線と連結する北大阪急行が箕面市まで延伸されて約1年半。同市では新駅を中心に住宅、商業、交通、子育て支援が連鎖し、〝選ばれる街〟としての存在感を強めている。人口は14万人を突破し、若い世代の転入も顕著だ。同市でまちづくりを進める行政・鉄道・商業・開発の4者に集まってもらい、まちの現在地と未来を語ってもらった。<文中敬称略>

まちの将来について語り合う(左から)奥野社長、原田市長、村木総支配人、家入リーダー=10月30日、箕面市役所
まちの将来について語り合う(左から)奥野社長、原田市長、村木総支配人、家入リーダー=10月30日、箕面市役所

子育て支援と鉄道延伸が相乗 市内完結型のライフスタイルへ

「住み心地」大阪トップ

 ─箕面市では「子育て・教育世界一の文教都市」を目指されている。そんな中、大東建託「いい部屋ネット」が行う「街の住みここちランキング2025」で大阪でトップになった。

 原田 長く1位だった大阪市天王寺区を抜き、初めて箕面市が1位に輝いた。さまざまな施策の効果が出てきた結果と実感している。
 国内で人口減が続く中、逆に箕面市は約15年で1万人増え、今年3月には住民基本台帳で14万人を突破した。多くの自治体が人口減少課題に直面する中、箕面市では子育て支援や教育の拡充といった議論ができているのは喜ばしいことだ。

原田亮 箕面市長
原田亮 箕面市長

 ─北大阪急行線(北急)が延伸して1年半。箕面のイメージが変わってきたと感じる。

 原田 まさに街の魅力が高まっている。確かに北急の延伸効果も大きいが、箕面森町と彩都の2つのニュータウンがあったこと、緑豊かな自然環境にあって、英語教育をはじめ学校教育や子育て支援に力を入れていることも、子育て世帯に選ばれる理由となっているのではないか。
 もともと〝あこがれの阪急沿線〟のブランドはあったが、阪急で発展した市西部、北急延伸で発展する市中部、そして市東部では27年夏にコストコ進出の見通しが立ち、沿道に商業施設もできる。阪大箕面キャンパス跡地にも商業施設が入り、きんでん学園(株式会社きんでんの教育施設)も移転してくる。東部の地域活性化の核となる開発が出そろってきている。市域全体の満遍ない発展が箕面のさらなる強みになる。
 先日、三菱UFJ銀行の新しい店舗がみのおキューズモール内にできた。新規出店は全国で2店で、東はニュウマン高輪(東京・港区)、西は箕面を選んでもらった。その理由は「箕面の魅力の高さと将来性」だと聞いている。メガバンクにまちの魅力のお墨付きをもらい、うれしく思っている。

潤沢な財源強み

 ─おむつの宅配を実施し、給食費無償化や習い事助成にも取り組もうとしている。子育てや教育施策は大阪市が先行していた印象があったが、市の規模からすると財源が大変だと思うが、実施することに驚いた。

 原田 箕面市はありがたいことに住之江競艇でのボートレース事業の財源が入る。収益は、今年で言えば年間50億円を一般会計に繰り入れる。 また、阪大箕面キャンパスの跡地も民間事業者に貸し出しており、賃料が70年間で約750億円入るなどを背景に安定した財政運営ができているため、給食費無償化など保護者にニーズの高い子育て支援策が行える。強い財政基盤を有する自治体でしかできないことなのかもしれない。
 北急の延伸効果で新駅にはタワーマンションが建てられ、若い世代や子育て世代が増えており、税収も増え、5─10年先と発展する街が作れる。子育て層を呼び込み、増えた税収を高齢者にも還元していく未来を見据えたまちづくりができるのが箕面の強み。

船場エリアの変貌

 ─起業家支援にも力を入れている。起業家に箕面市に住んで、あるいは事業所を置いてもらおうという発想か。

 原田 箕面は住宅都市で事業所や産業が少ない課題があった。そこで今回、初めて創業支援金をスタートさせた。箕面商工会議所とも連携し、経営支援も合わせてしっかりと伴走支援していく。
 特に船場地域は北急延伸もあり、阪大の学生がベンチャーを立ち上げたり、新しい研究所が来たりと繊維の街から徐々に色が変わり始めている。

 ─箕面船場阪大前駅では超高層マンション「Wタワーズ」の建設が進んでいる。住友商事としても大規模な開発になるのか。

 家入 東京建物が幹事で397戸のマンションを先行して完成させたが、現在は弊社が幹事で728戸のツインタワーを開発している。これだけ大規模な物件は、我々でもなかなかできない案件だ。

家入紘史 住友商事 住宅事業ユニット 住宅開発第五チーム チームリーダー
家入紘史 住友商事 住宅事業ユニット 住宅開発第五チーム チームリーダー

 ─ディベロッパーとして箕面の魅力をどう捉えているか。

 家入 都心から近いにもかかわらず、緑が豊富でキューズモールのような大規模な買い物施設もあり、かなり魅力的な住環境だ。
 加えて、北急延伸で梅田まで25分以内の交通利便性もある。原田市長はさまざまな改革に取り組まれ、我々のメインターゲットであるファミリー層への方策を講じていただいている点もありがたい。

 奥野 箕面船場阪大前駅は駅から地上に出るのが少し不便な状況があった。今回の開発で1階に新たな駅出入り口ができ、商業施設もできるそうで、最後のピースがはまると非常に期待している。

奥野雅弘 北大阪急行電鉄 社長
奥野雅弘 北大阪急行電鉄 社長

 原田 船場には超高層マンション3棟で新たに1100世帯が増える。新しい商業施設も建設が進み、にぎわいのある街に変わってきている。

鉄道延伸で街に変化

 ─延伸前に描かれていた計画通りに進んでいるか。

 奥野 箕面船場阪大前駅は、阪大移転やマンション開発など最初から青写真が描かれており、箕面萱野駅も区画整理や駅ビルの開発が計画されていた。まちづくりと鉄道延伸がセットだったので成功は半分約束されていたようなものだ。
 現時点ではコロナの影響などもあったが、当初予測の9割程度の利用がある。さらにマンションや商業施設が開業すれば、思ったより早く予測に到達すると期待している。

 ─みのおキューズモールから見て、北急延伸で感じられた変化は。

 村木 予想以上というか、これからまだやるべきことがあるという手応えだ。もともと地域住民に親しまれる施設を目指してきたが、駅ができて電車で訪れるお客様が圧倒的に増えた。バスターミナルが整備されて市内広域からもアクセスしやすくなり、市民にとってこの施設がより一層、生活拠点に位置づけられるようになったと感じる。
 総合スーパー「イオンスタイル」の売上は伸びており、109シネマズも好調だ。地域の団体や学校と協力しながら施設内でイベントをどんどん実施し、地域を巻き込みながら、愛着を持って使ってもらえる施設を目指したい。

村 木俊一 みのおキューズモール 総支配人
村 木俊一 みのおキューズモール 総支配人

 ─キューズモールでは、子育て支援にも力を入れている。

 村木 ママさん支援団体と協力し、例えばフードコートの小上がり席にスタッフが常駐して子育てママが安心して食事できるよう子どもを見守るサービスを行っている。子育ての相談窓口やママ向けの教室もあり、「それがあるからキューズモールに行く」という人もいる。そのために施設の近くに引っ越した家族もおり、ソフト面で子育てに貢献できていると感じている。

 ─新たに住宅を購入し、箕面に移ろうと考える子育て世代はまちづくりへの意識も高そうだ。

 原田 全国的には人口減で、病院や公共施設などを閉鎖する議論がある中、箕面市では来年オープンする室内温水プールを皮切りに消防署、学校の新設、病院の移転などまだまだ開発が進んでいく。それぞれのプレイヤーが頑張っているからにほかならない。
 また、来年はより一層アートにも力を入れ、文化・芸術的な要素も高めていく。

 ─最後に。今後の4者の連携について。

 奥野 この延伸事業は30年前、北急が阪急から乗降客を奪う可能性があるとして「ゼロサム」の事業だと考えられていたが、まちづくりとセットで取り組んだことで人口も増え、阪急電鉄グループも含めてみんながウィンウィンの関係となり成功につながった。今後も街の発展に向け、連携を深めていきたい。

 原田 新しい話題の多い中部や東部だけでなく、阪急箕面駅前の再開発や駅前ロータリー改修など西部地域の活性化にも力を入れている。中部ばかりという不満が出ないよう、市域全体があまねく発展していけるまちづくりを協力して手掛けたい。

 村木 銀行のオープンを含め、来館者からはこれまで市外に出ないと満たされなかった需要が箕面市内で完結できるようになることへの期待を感じている。市民の日常に沿えるような店舗構成を今後も強化していきたい。

 家入 箕面には住宅需要がかなりあると感じている。単に住宅を建てるだけでなく、「住まうことが豊かさにつながる」と実感していただけるような街づくりを皆さまと連携しながら進めていきたいと思っている。

 原田 今回、まちづくりを進める4者が対談する機会を得られ、まちづくりの心合わせができたと感じている。今後も意見交換を密に連携を取りながら、一緒に箕面のまちづくりを進めていきます。

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