名刺交換より、まず綱引きやリレー 経営者200人が本気の運動会 「ざぶとん1枚会」が目指すもの

 名刺入れを握りしめ、互いの仕事や肩書きを探りながら、商売につながる相手を物色する異業種交流会――。そんな打算が見え隠れする集まりとはひと味違う人柄重視の経営者交流会が10月21日、大阪市此花区にある室内競技場「おおきにアリーナ舞洲」で繰り広げられる。経営者たちがスーツを脱いで運動着に身を包み、大声を出しながら綱引きやリレーに挑むユニークな「運動会」だ。(佛崎一成)

昨年の「ざぶとん大運動会」で大声を出しながら必死に綱を引く経営者チーム

 主催するのは、全国の法人経営者を中心に延べ1800人以上が参加するコミュニティ「ざぶとん1枚会」の宮下直樹主宰=Make a Fan(メイク・ア・ファン)社長、大阪府松原市。

 多忙な経営者たちが、わざわざ運動会に参加し、時にはけがをするほど本気で競い合う。そこには、仕事ありきではなく、まず相手の「人柄」を知ることから関係を築く同会ならではの目的があるという。

名刺交換から始まる違和感

 「ざぶとん1枚会」には、多くの経営者交流会で見られるような月額会費や紹介ノルマ、出席の強制がない。会食も完全に割り勘で支払う。

 「参加費に乗せられた見えないコストや縛りがあると純粋に楽しめない」と宮下さん。あくまで本人が「行きたい」と思った時に参加できる場にしているという。

「さぶとん1枚会は人柄重視」と話す主宰の宮下さん

 ユニークな会名の由来は二つ。一つは、アマチュア落語家だった父の影響で培われた「笑い」へのこだわりだ。「おもろかったら座布団1枚、おもろなかったら没収。大人になって腹を抱えて笑う機会なんてそうないでしょう。その笑いを共有することで人間関係が深まる」

 もう一つは、金融業界の隠語で100万円を「帯」、1000万円を「レンガ」、1億円を「座布団」と呼ぶことからだ。「億単位のスケールで仕事を動かせる仲間を作ろう」という思いも込めたという。

 会発足のきっかけは、初対面から仕事の話に入る従来の交流会のあり方が、宮下代表にとって違和感があったからだ。

 「会ったばかりの相手と、なぜ仕事をしなければならないのか。まず必要なのは『ご縁』の前に『宴(うたげ)の縁』だと思っている。一緒に食事をして酒を酌み交わし、一緒に大笑いして初めて相手の素顔や人柄にふれられる。無防備に仰向けになれる関係ができた後に、初めてお金の縁、ビジネスへと進むべき。この順番を飛ばしたくない」

賞金100万円、10億円バイオリンも登場

 今回の「経営者運動会」は、その「宴の縁」をより大きなイベントにした形だ。開催は昨年に続き2度目となる。

 前回は万博を控えた大阪に全国から約200人の経営者が集まり、8チームに分かれて競い合った。大会終了後には各チームがそれぞれ打ち上げや定期的な懇親会を開くなどの交流が生まれており、実際に仕事へ発展した例も多く出たという。

 「従来の交流会のように『何の仕事をしているんですか』から入るより、運動会などを通じて同じ目的に向かい協力し合った方が、互いの人柄はずっと分かる。勝った、負けた、面白かったという共通体験をすると、一気に距離が縮まる」と宮下さん。

 実際に、運動会に参加した経営者50人以上から「再び開催してほしい」と望む声があったことから、2回目の開催に踏み切った。

「チームの勝利のために」とリレーを本気で走る経営者ら

 今年は10チーム、約200人規模を予定。賞金100万円を巡る競技に加え、さまざまな企画も用意する。

 「200万円と10億円のバイオリン(ストラディヴァリウス)の音色を聴き分ける」というテレビのバラエティ番組でもおなじみの格付けチェックだ。さらに、跳び箱22段を跳ぶパフォーマンスなど、大人が童心に返って楽しめる仕掛けを盛り込む予定だ。

「わざわざ」が生むつながり

 「ざぶとん1枚会」はこれまでに全国各地で400回以上の交流会を開き、延べ1800人以上の経営者が参加。2回以上参加した企業だけでも800社に上るというが、人数を増やすことは目的にしていない。宮下さんはその理由について「1000人集めたら次は2000人と数を追いがちだが、それでは本来の目的を失ってしまう。それよりも気の合う100人と深く付き合う方がいい」と説明する。

 また、ユニークなのは、あえて移動に不便な佐渡島(新潟県)や八戸(青森県)、高知県などに経営者を集めて交流会を開いているところだ。

 「通常は都心などの集まりやすい場所を選ぶが、不便な場所で開く方が、参加する人の本気度や人柄が見えてくる。加えて、遠い場所で会った人とは、不思議と仲良くなる。“わざわざここまで来た”という共通体験があるから」と宮下さん。

 会を通じて都市部の経営者と地元企業が接点を持ち、地方企業のDX化につながったり、都市部の企業がその地方の商品を仕入れたりするなど実際のビジネスにもつながっているという。

 ただ、宮下さん自身は会の活動を「地方創生」と大げさに呼ぶことを好まない。「別に『社会のためにやっている』と言わなくてもいいと思う。面白そうだから集まった。仲良くなったことで仕事につながったし、地域にお金が落ちた。ただの結果論でいい」

高らかにトロフィーを掲げ、喜びを分かち合う経営者ら

 10月開催の運動会も同じだ。損得や利害関係から始めるのではなく、一緒に走って、笑って、負けず嫌いをむき出しにする。肩書や会社の規模ではなく、一人の人間として相手の人柄にふれる。10月21日のアリーナでは、そんな「人柄から始まる経営者交流」の形が、運動会という少し意外な舞台で繰り広げられる。

 問い合わせは電話080(3774)1275、宮下さん。

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