増加する空き家問題に対し、売却が困難な「借地権付き建物」などを専門家の連携で解決に導く動きが進む。独自に空き家税を導入する寝屋川市など、先進的な取り組みを追う。

寝屋川市の「空き家税」と空き家流通に至る事例を紹介
全国で空き家は増え続けている。総務省の2023年住宅・土地統計調査によると、全国の空き家は900万戸で、5年前から51万戸増加した。住宅全体に占める割合も13.8%と過去最高となった。このうち、賃貸や売却に出されておらず、普段使われていない空き家は385万戸に上る。こうした中、寝屋川市は空き家を流通させるための独自の税制度「空き家税」を導入、7月に条例が成立した。課税開始は29年を予定。使われていない空き家を所有する人に負担を求めることで、売却や賃貸などを促し、住宅として再び利用されることを目指し、空き家に税をかけることで所有者の行動を促すという、全国的にも注目される取り組みだ。
寝屋川市の隣に位置する守口市も、空き家問題を抱える自治体の一つだ。総務省の同調査によると、守口市の空き家は1万3820戸、空き家率は17.1%で、全国平均を上回る。では、所有者だけでは解決が難しい空き家にはどのような問題があるのか。今回はNPO法人大阪空き家相談センターが解決に導いた守口市の事例を紹介しながら考えていきたい。(濱田康二郎)
負担となる借地上の空き家
空き家になるきっかけの多くは「住んでいた人の死亡」だ。国土交通省の「令和6年空き家所有者実態調査」によると、以前は人が住んでいた空き家の約44%が持ち主や住んでいた人の「死亡」を理由に発生している。相続後も、借地や建て替えの制限(再建築不可物件)、老朽化などで手放したくても手放せなくなってしまうことが空き家の長期化につながっていると報告されている。
大阪の「住まい活性化フォーラム」の事業、大阪の空き家コールセンターを通じて、NPO法人大阪空き家相談センターへ相談が寄せられた守口市菊水通で相続した建物の事例を紹介しよう。
土地所有者から土地を借りていた建物を相続した人からの相談。相続は2006年に発生しており、2023年に相続登記を完了し、名義変更済み。既に相続放棄は選択できない状況だった。
さらに相続後に土地を借りる対価として支払う「地代」が長期間滞納されていたことがわかった。以前の建物持ち主が生活に困窮していたためだ。そのような状況から、相談者は使っていない家を手放し、できることなら土地を地主に返したかった。
ところがここで難しい問題に直面する。土地を返すには原則として建物を取り壊し、更地にする必要があるためだ。家はいらない。しかし、壊す費用を負担できない。相談者にとっては家を相続したことが負担になっていた。
一方、地主にとっても地代の滞納が続き、空き家が残ったままでは土地を有効に使えない。八方ふさがりのような状況だ。
担当した司法書士の梅田裕介さんは「建物所有を目的とする賃貸借契約は解除する際、建物を収去し土地を貸主に返却することが原則です。しかしながら、土地所有者が原則通りの対応しかしない場合、金銭負担ができない建物所有者に対して訴訟提起し強制執行を以て建物を収去することがゴールとなります」と話した。
「このような対応においては土地所有者、建物所有者ともに大きな負担となることや、訴訟提起より合理的な落とし所があることを双方に認識してもらい、合意を取るが、今回のケースでは金額の負担割合の落とし所を決めることが最も難しかった」と梅田さんは話している。

裁判によらない解決への道
法律上の手続きを進めるなら、建物を取り壊して土地を返さなければいけない。しかし、相談者に解体費を負担する余力がなければ、現実には前に進まない。地主が裁判を起こしても、解体費や滞納した地代を回収できるとは限らず、時間や費用も必要になる。
そこで宅地建物取引士、行政書士、司法書士らが連携し、別の方法を検討した。建物の所有権を地主に移し、地主が建物を取り壊して土地を活用する方法だ。相談者は建物を抱え続ける負担から開放され、地主も裁判とは別の方法で土地を取り戻し活用を検討できる。結果として空き家の放置も避けられる。
相談から約2カ月後の6月には、権利関係が整理され解決に至った。土地所有者は近隣の土地を多数所有、賃貸しており、今後は今回のケースと同様に借家を整理して土地をまとめ、一体の土地とした上で事業を計画中(大規模マンションの建築等)だという。
この事例では、単に「空き家を売る」という選択肢だけでは解決できなかった。土地と建物の関係を確認し、滞納していた地代と解体費用、地主と建物所有者それぞれの事情を整理した上で、双方にとって現実的な方法を同センターが中立的な立場で対応したからこそ解決した事例と言える。
「売却」以外の選択肢を探る
空き家対策では「売ればいい」「壊せばいい」と簡単には言えないケースがある。事例のように相続、土地と建物の所有者の違い、未払いの地代、解体費など空き家には複数の問題が絡み合っている場合があるからだ。
寝屋川市が空き家税という新たな手段を導入する中、所有者が自ら解決に動けるような相談窓口や支援の仕組みも欠かせない。寝屋川市が空き家流通促進プラットフォームを組織したように、守口市では25年7月、NPO法人「大阪空き家相談センター」と空き家対策に関する協定を締結。空き家の発生予防や適正な管理、流通、活用などについて、専門家と連携して取り組んでいる。
空き家の問題は、不動産業だけで解決できるとは限らない。相続や登記なら司法書士、契約や許認可なら行政書士、不動産の売買や活用なら宅地建物取引士など、問題に応じて必要な専門家が異なる。空き家が動かない理由の一つとして所有者自身が「誰に相談すればいいのか分からない」こともあげられる。だからこそ、空き家を所有する人だけに責任を背負わせるのではなく、地域で専門家や事業者が関わり、解決への道筋を一緒に考える仕組みが求められる。
空き家対策は税をかける「だけ」でも、所有者に売却を促す「だけ」でも解決しない。所有者が抱える事情を整理し、専門家の力を借りながら、売却、賃貸、解体、活用など、その家に合った次の道や「進路」を見いだすことが重要になっている。
NPO法人大阪空き家相談センター
相続や境界問題で放置された空き家の悩みを様々な専門家が連携して解決する無料の相談窓口を開設。「売却」を前提とせず、所有者の意向に添った中立なアドバイスを行う。生前・遺品整理や遺言書作成などの終活支援にも対応し、守口市のほか、池田市、柏原市、河内長野市などの自治体と連携協定を結び、個別相談会を積極的に実施している。
次回の守口市のセミナーと相談会は9月15日、守口市役所で午後1時から開催する(守口市後援)。申し込みは同センターへ。電話06(6556)7705、月~金9時~17時受付
