あべのハルカス近鉄本店タワー館11階の美術画廊で8月5日から11日の7日間、「土田康彦 ヴェネツィアンガラス展 僕が僕であるために」が開催されている。入場無料。

同展は、ガラス作品で世界トップクラスのアーティストとして認められている土田康彦氏が過去10年間に渡り制作した作品を一堂に展示する過去最大規模の個展。惹き込まれるような美しさの作品が会場内の配置されており、『光の束』『桜の記憶』『桜吹雪』『楽時碗』『地中海』『イノセント』『水溜まり』の7つの自身を代表する作品シリーズから約200点を公開している。


「ガラスの詩人」とも評される土田氏の哲学を感じさせる作風を、インパクトあるフォームと色彩の壮大な作品群から体感できる展覧会だ。


土田氏は作品を制作するプロセスをこう説明する。まずアイディアが降りてくる。次にそのアイディアを言葉で表現する。この際に土田氏は詩という表現方法を用いる。その次に言葉を平面の絵に変換し、最後にその絵を立体的な作品に昇華させる。こうしてできたのが、会場内に並べられている作品たちだ。


言葉から平面、そして立体へ。
出展している作品を制作していた過去10年間を振り返ると、世の中では経済危機があり、コロナがあり、戦争があり、エネルギー問題があり、AI革命が起こった激動の10年だった。土田氏は、この10年、常に新しいデザインを描き、新しいコンセプトを考え続けてきた。「なぜなら、どれほど時代が変わろうとも、人が人の手によって作られたものに心を動かされる瞬間は、決して消えないと信じているから」だと言い、この10年の作品は、単なる「作品」ではなく「その時代ごとの彼自身の体温の記録だったのかもしれない」と語っている。

うれしかった日の色。苦しかった日の形。希望を失いそうになりながら、それでも前を向こうとした痕跡がそこから見え隠れしている、そんな作品なのだ。
会場に入ってすぐ目を惹いた作品をみて回って行くと、アート作品だとわかっていても、このまま実生活でも使ってみたくなるものがたくさんあった。


土田氏に「実際に使用できるのか?」と聞いてみたところ、「ヴェネツィアンガラスは実用には向かない素材で、水を入れたりすると汚れが残り、美しい色味がくすんでしまう」と説明してくれた。
ただ購入した人がどう使うかまで拘束するつもりはないので、そこは所有者の判断に委ねるとのことだった。
このような作品が一つ室内にあるだけで、その空間の雰囲気が全く違ったものになるのだろうと感じ、またその放つエネルギーを感じる日常を過ごせたら、と憧れてしまう。

鑑賞するだけならコストはかからないが、この空間にいるだけで何か得した気分になれるので、時間のある方はぜひ足を運んでみてほしい。
また、土田氏は会期中、毎日在廊の予定なので、タイミングが合えば、作家自らの言葉で作品について話を聞ける可能性も。
