トイレや吠え、散歩の引っ張り… 飼い犬のしつけをプロが指南 ジャパンケネルクラブ大阪ブロック訓練士協議会の小松隆樹さん

 ペット可のマンションが増え、出会う住民の多くが犬を連れている―そんな光景が日常になってきた。その一方で、「トイレができない」「よく吠える」「散歩で引っ張る」などしつけに悩む飼い主も多い。犬と良い関係をどう築けばいいのか。訓練のプロで、ジャパンケネルクラブ(JKC)大阪ブロック訓練士協議会の小松隆樹会長に正しいしつけの方法を聞いた。(佛崎一成)

国内で最も大きい愛犬団体ジャパンケネルクラブ(JKC)で訓練の中央委員会委員に加え、大阪ブロック訓練士協議会の会長も務める小松さん。各団体の公認訓練士が集まる全日本訓練士連合協会の大阪支部の相談役も務める

ごほうびは「先」ではなく「できた後」

 ─ペットの「しつけ」と「訓練」の違いは。

 根本は同じ。ただ、「訓練」は少し硬く聞こえ、「しつけ」は行儀作法のように聞こえる。今はおやつを使い、しつける方法が主流だが、誤った与え方をしている飼い主も散見する。

 ─誤った与え方とは。

 最初からおやつをちらつかせて、「ほら、お座り」「伏せ」と言っても、犬が本当に命令を理解して動いたとは限らない。飼い主の手元にあるエサを取るためにお尻を着き、手を伸ばしているだけかもしれない。それを「お座りができた」と勘違いしているケースもある。本来は「座れ」と言われたから座る、「伏せ」と言われたから伏せる。犬にその意味を分からせることが重要だ。

 ─なるほど。行動の意味を犬に理解させると。

 そうだ。ご褒美は「できた後」に与えるもの。最初から「これあげるから言うこと聞いて」では、ご褒美がなければやらない。例えば、「そこにじっとしていなさい」と伝える時、ごほうびでつるのではなく、「ここではじっとしていないといけない」という意味を理解させることだ。

トイレの失敗は、叱るだけでは直らない

 ─「トイレができない」「散歩で引っ張る」「吠える」の3つに悩む飼い主が多い。

 一番難しいのがトイレだ。ペットショップで「この子、トイレできますよ」と言われることがあるが、実際に家に連れて帰ると全然できないケースがある。

 この理由は簡単だ。店の狭い展示ゲージの中で、犬は本能的に寝床を汚したくないから、寝床の横のトイレに行き、用を足しているだけ。店員もそれを見てトイレができていると勘違いしている場合がある。トイレトレーニングはいかに早く取り組むかが大事だ。年齢を重ねてからでは直すのが難しい。

 犬は排泄の時が一番無防備で不安を感じている。だから、安心してできる場所を探す。リビングで排泄をして叱られると、人の目の届かない隅でするようになる。これを放置すると、「ここなら安心」と覚えてしまうから、きちんと誘導しなければならない。叱った後にトイレに誘導し、正しくできたら褒める。この繰り返しで覚えさせる。

吠えるのにはワケがある

 ─吠える悩みはどうか。

 まずは原因の究明からだ。要求なのか、不安なのか、警戒なのか─。原因次第で対応は変わる。

 ─要求吠えとは。

 「散歩に行きたい」「ご飯ちょうだい」「構ってほしい」などがある。ただし、吠えるのをやめさせようと、すぐに散歩に連れ出したり、おやつをあげたりすると、犬は「吠えればワガママが通る」と勘違いしてしまう。

 ─犬に主導権を握られている飼い主は多そうだ。不安で吠えているケースについては。

 外ではしゃぐ子どもの声や室外機の音、玄関の物音におびえることがある。この場合、「その音は怖くない」と少しずつ慣れさせることが必要だ。もし、室外機の音におびえていたなら、その場所まで連れて行き、「ほら、怖くない」と教える。

 呼び鈴に吠える場合もある。最初は配達員など知らない人の訪問におびえて吠えていたのが、成長するに連れて「吠えたことで追い払った」と勘違いし、図に乗る犬もいる。

 ─やめさせるには。

 すぐにやめさせるなら叱るしかない。時間をかけられるなら、「呼び鈴が鳴ったら伏せる」など別の行動を覚えさせてもいい。

ロット・ワイラーを連れる小松会長と(右)ブリーダーの高田夫妻

散歩で引っ張る犬には「気づかせる」

 ─散歩中に引っ張られて困る場合はどうすれば。

 犬は純粋に行きたい方へ行こうとするから、「歩くペースを人と合わせる」ように教えなければならない。指導のポイントは、前に出たら叱るか、リードを瞬間的にパンと引っ張って驚かせ、「前に出てはいけない」ことを理解させる。犬が自ら飼い主の横に着いたら、きちんと褒める。

 中には飼い主がリードをたぐり寄せ、無理矢理に横に着けて「賢いね」と褒めている姿も見かける。それだと犬は〝引っ張っている状態〟なのに褒めらているわけだから、指導になっていない。

 大事なのは犬自身に「歩くペースを合わせた方がいいんだな」と気づかせることだ。前へ行くと叱られる、横に戻ると褒められる…。何が正しいかを犬がちゃんと理解すれば歩き方すら変わってくる。

 ─褒める時、叱る時のコツは。

 言葉が通じない分、オーバーな表現が伝わりやすい。徐々に「賢い」の一言や、飼い主の表情だけでも以心伝心できるようになる。厳しくしつけることが「かわいそう」だと思う人は多いが、しつけておく方が将来的なメリットは大きい。

 例えば、外出時に外で排泄できず、家に帰るまで我慢する犬がいる。その姿を見て、かわいそうになり、飼い主が途中で家に連れて帰る。だが、犬も我慢を通り越せば外で自然に排泄できるようになから、「かわいそうだ」と思っても飼い主は少し我慢してほしい。外での排泄を経験をさせることで、「外でトイレをしてもいいんだ」と初めて理解する。外出先で排泄できるようになれば旅行にも行けるし、長い目で見て犬のためになることが多い。

 ─会長にとって「犬を飼う責任」とは何か。

 犬は家族の一員だ。だが、家族だから何でも許すというのも違う。人間の子どもでも叱るときは叱るし、教えるべきことを教えるでしょう。犬も同じ。

しつけは家族で楽しむ成長の時間

 ─しつけを重荷に感じず、「関わり」と捉えるわけか。

 そう。しつけを「大変なこと」「面倒なこと」と思えば長続きしない。トイレの失敗でも、「また失敗した」で終わらず、「今、おしっこしそう」と家族で見守る。父親がテレビを見ているふりをして、実はガラスに映る犬の様子をチェックする。母親が「今、しゃがんだ」と合図する。そして、失敗しそうなら対応し、成功したら一緒に喜ぶ。そういう過程も含めて成長を楽しんでほしい。

 トイレができる、悪いことをしない、留守番が落ち着いてできる。そうなれば犬も人も無理なく一緒に暮らせるようになる。

 ─小松会長のような訓練のプロが相談相手にいると、飼い主も安心だ。

 昔のように、大型犬を本格的に訓練に出す文化は減っている。一方で、マンション住まいの小型犬が「家の中で吠えて、近所迷惑なので何とかしたい」「トイレを何とかしたい」という相談が多い。社会性を育むなら、犬の幼稚園に通わせてもいい。子犬のうちに他の犬や人、音に慣れることは大事だから。
 ただ、本格的な訓練や、飼い主の暮らしに合わせたしつけをしたい場合は、訓練士と付き合う方がいつでも相談できるから安心だ。

犬を迎える前からしつけは始まる

 ─これから犬を家族に迎えたい人に伝えたいことは。

 「どこで購入したらよいか」「どうしつけたら良いか」で迷う人は多いと思う。そんな時は、犬を迎える前に訓練士に相談するといい。どんな犬種が合うか、どういうブリーダーから購入するのがいいのか、迎えた後にどう育てるか。この部分を最初に相談しておくだけで、失敗は随分減る。

 ─ブリーダー選びも大切ということか。

 「同じ犬種ならみんな同じ」と思うかもしれないが実は全然違う。特に性格が大事で、どんな犬を掛け合わせ、どういう考えで繁殖しているかのブリーダーの質は大きい。例えば、難しい犬種のロット・ワイラーのブリーダーで有名な岐阜県の高田成人さんなどは超一流だ。ロット・ワイラーは「怖い犬」「番犬」の印象があるが、本来はパートナードッグ。家族に忠実で、家族を守る犬だ。実際に、高田夫妻が繁殖するロット・ワイラーは従順で明るい性格の子ばかり。犬種本来の良さをどう残すかを真剣に考えるブリーダーの犬を選べば間違いない。

ロットワイラーで初のアウトスタンディングブリーダー賞を受賞した高田さん(右)。小松さんが信頼するブリーダーの一人だ

 ─迎えてからでなく、迎える前から始まっている。

 子犬のうちからプロが少し関わるだけで、その後の暮らしは本当に変わる。犬も人も幸せに暮らすには、最初の選び方と、最初の関わり方が本当に大事だ。

■小松会長のONE’S DOG SCHOOL/大阪市北区浮田1-6-5/電話06(6372)4698
■ブリーダー高田夫妻のプラウドラッキーワン/岐阜県瑞浪市釜戸町1858-549/電話0572(63)3081

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