【関西の教育最前線(7)】関関同立・産近甲龍 関西8私大の入試動向

藤山正彦(開成教育グループ)入試情報室長
藤山正彦(開成教育グループ)入試情報室長

 大学入試は近年、大きく変わってきた。2020年でセンター試験が終了し、21年度からは傾向が異なる「大学入学共通テスト」に。これに伴い受験生の間で「制度変更時は既卒者が不利になる」の憶測が流れ、早期決着や安全志向がみられた。

 さらに新型コロナの影響で「もし受験期に感染したら…」の不安からか、21年度入試も早期決着や安全志向が続き、しかも遠隔地への受験に抑制がかかった。

 一方で私立大は文部科学省の定員厳格化の基準を守るため、入学手続き状況を見ながら小刻みに追加合格を出す手法が常態化。この影響で受験生側に入学金の2重、3重払いが発生し、問題視された。

 そこで23年度からは定員の基準となる生徒数を、単年度の募集人数からではなく、収容定員(つまり単年度ではなく4年間のトータル)での判断に変更。今年、定員を大幅にオーバーしても次年度以降で調整できることから、規制は緩和されたといえる。

 こうした全体の動きを元に、関西の私立大の志願動向を振り返ってみる。

関西学院大

関西学院大

 推薦入学の割合が比較的高かったが、最近は一般入試の入学者を増やしている。全学部で日程を増やしたり、地方会場を充実させるなどで受験しやすくなり、受験者数が3年連続して増加。それに合わせて合格者数も増えている。

関西大

関西大

 20年度を最後に共通テスト利用を除く3月募集を取りやめ。この影響で出願数が大きく減る状況が続いている。ただし、定員管理の視点で見ると、21、22は多くの合格者を出していたが、今年はその反動からか、抑制に変化している。

立命館大

立命館大

 東日本や地方の受験生や、一般入試の入学者も多いため、コロナ禍の影響を一番受けた。21年度入試の出願数激減後は緩やかに回復するが、まだ20年度水準に戻らず。今後の回復状況によって難易度が変動する可能性も。

同志社大

同志社大

 国公立との併願や既卒者の受験も多いが、20年度の安全志向による既卒者の減少が、21年度まで続いた。しかし、19年度以降の合格者増加で多少ハードルが下がった印象を受けているのか、出願数は緩やかに回復している。

京都産業大

 本来は学生生活に便利なワンキャンパス(キャンパスが1カ所にまとまっている)が自慢だったが、コロナ禍では対面授業の再開が遅れるなど逆風に。21年に出願数が大きく落ち込んだが、合否ラインはそれほど下がらず、安定して入学者を確保できている。

近畿大

 22年度は新設の情報学部が人気(公募の平均倍率24.3倍!)で出願急増。しかし、今年は揺り戻しで減少。ただ、長い目で見れば出願は増加基調で、出願数全国最多記録は連続10年目。25年の医学部移転に伴い、26年から医療系の新学部を設置する議論も。現役で受験できる現高1以降の動きにも注目。

龍谷大

 23年度に心理学部を新設。25年度には社会学部が瀬田キャンパスから文系他学部のある深草キャンパスへの移転するなど話題が続く。初の共通テストとなった21年度には、共通テスト利用の科目数のバリエーションを増やすなどし、コロナ禍にも関わらず出願数を伸ばした。公募制の出願数もここ数年は右肩上がり。

甲南大

 推薦(公募制)に面接を取り入れるなど、志願しやすいとはいえない(?)入試を続けてきた甲南大だが、今年度から英語の民間資格を利用する方式を追加するなど受験者層の拡大に舵を切る。次年度は公募制で、面接なしの方式を追加するなど、さらに受験しやすくなりそう。


 さて、関西8大学を例に過去6年の推移を紹介したが、全体的な状況よりも、実は大学ごとの条件や事情、入試制度の変更などで出願動向に変化があったことがわかる。

 学部ごとの動きも同様だ。例えば、データサイエンス人気によって情報系の学部がどこも難しくなったかといえばそうでもない。

 確かに近畿大の情報学部はゲーミングやメタバースに加えて情報セキュリティーなどエンタメ系+未来志向の要素を打ち出した広報戦略もあって、創設早々理系の最難関グループ入りを果たした。一方で、関西大の総合情報学部の合格最低点はほぼ変化していないし、立命館大の情報理工学部も24年度から大阪いばらきキャンパスへの移転が発表された影響からか出願倍率は上がったが、合格最低点に変化はあまりみられなかった。

 24年度は旧課程の最終年度の入試ということで、一部では「また安全志向になるのでは?」と言われている。「早く入学先を決めておきたい」という受験生心理も理解できるが、安易な妥協をすることなく、最後まで第一志望校を目指してほしいと思う。

 そのためにも、得意科目や単元などの学力バランスや、自分に適した解答方法などに、より適合した入試を行っている大学、方式をみつける情報収集も、受験勉強と同様に重要だ。