【関西の教育最前線】世界が注目する近畿大


入試情報室長
藤山正彦
(開成教育グループ)

学生数は全国3位

 近大は1925年、大阪に設立された夜間授業のみの「日本大学専門学校」がルーツ。40年に「大阪専門学校」として日大から独立、49年に現在の近大になりました。

 55年の学生数は、理工・商経・法・薬の4学部で3570人でしたが、今は4、6年制だけで3万4156人と約10倍。日大、早稲田に次ぐ全国3位の規模で、西日本では最多。15学部のマンモス大に成長しました。

特徴ある学部

 関西の8総合私大「関関同立・産近甲龍」で考えると、近大には他に無い学部や研究組織がいくつもあります。

【薬学部】1954(昭和29)年設置。2008年に立命館が設置するまでの54年間は、8大学で唯一だった。

【水産研究所】世界初のクロマグロの完全養殖で有名になった施設は1948(昭和23)年の設置。近畿圏で水産系施設があるのは近大と京大だけ。

【農学部】1958(昭和33)年設置。8大学では龍谷が2015年に開設するまでの57年間は、近畿圏唯一の私大農学部だった。

【医学部】48年前の1974年に設置。

【情報学部】2022(令和4)年設置。情報系の学部では関大の総合情報学部、立命館・京産大の情報理工学部や甲南の知能情報学部があるが、工学系やビジネス系に加え、メタバースやサイバーフィジカルなどエンターテインメント系も扱い、守備範囲が他大学と異なる。

文系・理系バランス

 募集定員に占める理系学部の割合を8大学で比べると、近大は最も理系率が高く、文理がほぼ1対1となっています。好況時には企業の採用状況も良いので文系学部に人気が集まり、不景気になると公務員試験に強い法学部と就職に強い理系に人気が偏るなど、時代によって学部の志願動向は変動しますが、近大は全体的に影響が少ない構造になっています。もちろん医学部など景気変動と関係ない「固定層」も持っており、延べ志願者数は9年連続日本一です。

学生を大切にする

 東大阪のキャンパスは学生数も増え、平日昼の人口密度が高くなっていました。そこで、2017年、キャンパスの真ん中に「アカデミックシアター」という図書館と自習室、カフェを合体した施設を開設。落ち着いて自分のペースで知的活動できる場が生まれました。スマホアプリで座席予約できる自習室はなんと24時間営業。職員の働き方改革の影響で、学生が施設を利用できる時間を減らす大学が多い中、驚きの作戦です。

 つんく♂プロデュースの派手な演出の入学式も、単なる話題作りではなく、入学してきた学生に、ここに来てよかったと感じてもらう仕掛けとして考えられたそうです

世界の評価は高い

 英国の教育専門誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)」が毎年大学の世界ランキングを発表しています。学生一人当たりの資金、引用論文数、教員と学生の比率、学生や高校教員へのアンケートなどを得点化しているものです。日本の私立総合大学では、2020年に早稲田と慶応、近大が800位以内に、22年は800位までに慶応、1000位までに近大、1200位までに早稲田と立教が入っています。

 一方、関関同立はいずれの年度もランク外。規模が大きく、特に医学系の大学院など引用される論文が多い研究機関の比率が高い大学の方が有利とはいえ、それでも慶応に次ぐ評価はすばらしいと思います。

 近畿圏では関関同立の併願校に扱われることもある近大ですが、世界では早慶と並ぶ評価なので「お買い得」といえるかもしれません。