「物件を動かす」から「地域を動かす」へ 不動産業の若⼿経営者らがフォーラム ⼤阪からはじめる業界改革

 空き家の増加や孤独死、地域コミュニティーの希薄化――。不動産業が向き合う課題が、物件の売買や仲介だけでは済まない時代に⼊っている。(一社)⼤阪府宅地建物取引業協会(⼤阪宅建協会)の⻘年組織「⻘鳩会」は3⽉6⽇、⼤阪市内で「未来共創フォーラム」を開き、不動産業界が抱える課題と、地域社会の中で果たすべき新たな役割について議論を交わした。(佛崎⼀成)

フォーラムの主旨について説明する大阪宅建協会泉州支部の長谷川好伸支部長

変わらぬ課題

 フォーラムではまず、不動産業界の現状について、四天王寺⼤経営学部の阪⻄洋⼀准教授が2019年と26年に実施したアンケート結果をもとに分析した。

 この数年で、不動産テックの導⼊や、重要事項説明などの⼿続きをオンラインで⾏う「IT重説」は進んだ。⼀⽅で、「情報が不透明」「個⼈の経験や勘に頼る営業スタイル」「消費者からの不信感」といった課題は、数年前と⼤きく変わっていない実態が⽰された。

 若⼿経営者らからは「過去の成功体験に縛られたままでは、消費者の信頼を失う」「物件を仲介するだけではなく、不動産業として新しい価値を⽰していく必要がある」といった声が上がった。少⼦⾼齢化で市場の縮⼩が進む中、従来の延⻑線上では⽴ち⾏かないという危機感がにじんだ。

「仲介」から「地域の窓⼝」へ

 ⾏政担当者も交えたパネルディスカッションでは、不動産業を単なる仲介業ではなく、地域を⽀える社会インフラとして捉え直すべきだとの意⾒が相次いだ。

 空き家や孤独死といった課題は、⼀つの事業者だけで解決するのが難しい。⾏政や福祉、他業種、同業者との連携が⽋かせないとし、「物件を動かす」だけでなく、「街の困りごとを受け⽌める窓⼝」としての役割を不動産業者に求める声も上がった。

 登壇者からは「物件の条件だけを並べる時代は終わった」「これからは、そこに関わる⼈や地域の物語をどうつないでいくかが問われる」といった意⾒も出され、業界の役割そのものを⾒直す機運がうかがえた。

フォーラムには府内15支部に加え、兵庫や京都の宅建協会のメンバーも参加した

インフラ産業としての⾃覚

 フォーラムを通じて繰り返し語られたのは、不動産業が単なる「仲介」ではなく、地域社会を⽀える「インフラ」だという認識だ。

 ⼤阪宅建⻘鳩会の⻄本仁尚部会⻑は「DXによる業務効率化はあくまで⼿段。⽬的は、⽣まれた余⼒で地域課題に向き合い、消費者との信頼関係を再構築することにある」と説明。その上で「⻘鳩会が掲げる『未来共創』は、従来型の過当競争を避け、同業者同⼠で知⾒を共有しながら、業界全体の底上げを図るという決意でもある。中⼩の不動産業者が⽣き残るには、地域に根ざしたネットワークを⽣かし、⾏政や他業種、住⺠とともに『まちの未来』を描いていくことが⼤切」と話した。

 アナログな慣習が今なお多く残る不動産業界。デジタル技術による効率化と、⼈と⼈とを結ぶ対⾯の⼒をどう両⽴させるか。不動産業が地域の課題にどう向き合うのかが、これからますます問われそうだ。

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