結晶づくりから売上分析まで 小学生が自ら問い立てる探究教育 広がる新しい学びの形

 近年、人工知能(AI)の発達が著しく、疑問があれば即座に答えを得られる環境が整いつつある。一方で、明確な正解が存在しない課題に向き合う「探究」型の授業や、それに特化した学習塾が増加している。知識の習得にとどまらず、自ら問いを立て、考え抜く力を養う教育への関心が高まっているためだ。
 こうした動きの中、東京大学は2027年にも、「カレッジ・オブ・デザイン」という文理融合の探究・教育プログラムが70年ぶりの新しい学部として開講予定で、AIでは導きだせない分野として注目されている。

 子どもたちを対象とした探究教育も広がりを見せている。2021年に開塾した、教科書や参考書を手がける啓林館の「たんきゅう塾NEO」も、その一例だ。
 同塾は3月15日、同志社女子大学 今出川キャンパス(京都府)で成果発表会を開催した。発達段階に応じて「プレスクール①」「プレスクール②」「たんきゅうα」の各クラスに分かれ、小学生の子どもたちがそれぞれの研究成果を発表。日頃の学びの成果を披露した。

 「プレスクール①」では、10人の児童が日常生活の中で抱いた疑問をテーマに、1年間を通じて探究した成果を発表した。会場では各自がブースを設け、来場者に向けてプレゼンテーションを行った。
 指導にあたる講師は「予定していなかったことに対応することも学びの一つ。発表中でもどんどん質問してほしい」と呼びかけ、会場では素朴な疑問から専門的な内容まで多様な質問が飛び交った。児童たちは発表の途中でも丁寧に耳を傾け、理解を促すよう言葉を選びながら説明する姿が見られた。
 発表内容の背後には、多くの失敗や試行錯誤の積み重ねがあり、その過程を含めて語る姿が印象的だった。児童たちは目を輝かせながら、自ら導き出した答えを来場者に伝えていた。

結晶についての発表

 「プレスクール②」では、「オレンジの体積は公式以外でも求められるのか」や、「寺田町駅前の吉野家の1日の売上高、1週間の売上高、1年間の売上高はいくらか(テークアウト除く)」といったテーマで発表が行われた。このうち売上高の推定では、1時間当たりの回転数や価格帯、客層、人気商品などを時間帯別に分析し、売上高を概算で導き出すなど、実態に即した手法が用いられていた。

 来店客としては何気なく利用している店舗の売上構造を俯瞰し、論理的に数値化していく視点は、小学生によるものとは思えないほどで、会場に深い印象を残していた。

発表の様子

 「たんきゅうα」では、「人と二酸化炭素」「フードマイレージ」「バイオマス発電」について、3グループに分かれ、コンセプトマップで課題を発見し、問題の可視化から、現状の把握、今後の課題について発表を行った。

 後のインタビューで、フードマイレージについて調べた古川凛花さんは「都会で新鮮な野菜をたくさん育ててみたい」と将来の夢を教えてくれた。

発表の様子

 啓林館の取締役、坂本陽一氏は、「学校のテストは正解があるものがほとんどだが、社会に出ると答えのない問題に日々向き合うことになる。『なぜその問題が起きたのか』『どうすればよいのか』を仲間と意見を交わしながら考え、正解のない答えを探していくことが大切だ」と強調した。
 その上で、「世の中には多くの課題がある。『たんきゅう塾NEO』での学びをゴールにするのではなく、これから世界へ羽ばたくためのスタートにしてほしい」と述べ、子どもたちにエールを送った。

左から栗田一平さん(新小学5年)、稲本圭一郎さん(新小学3年)、古川凛花さん(新中学1年)

■たんきゅう塾NEO(新興出版社啓林館)/大阪市天王寺区大道4-3-25/電話06(6775)6525

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