子どもの健康や発育にいつも気をかけていても、多くの保護者が意外と知らない病気、「思春期早発症」。早めの発見が必要である一方で、なかなか気づきにくいこの病気について専門家に話を伺った。
今回、話を聞いたのは
希望の森 成長発達クリニック 院長 望月貴博さん
Q,「思春期早発症」とはどんな病気ですか?
A.まず、「思春期」とは、性ホルモンの分泌により二次性徴が始まり、成熟して、体の発育が最終的に停止するまでの時期を指します。二次性徴とは具体的に、男の子だと精巣(睾丸)の発育、陰茎の発育、陰毛の発育、声変わりと成熟していくこと、女の子だと乳房の発育から始まり、陰毛の発育、初経(初潮)と成熟していくことです。思春期早発症は、年齢に不相応な早い時期に性ホルモンが分泌されて、二次性徴と思春期の成長速度が上がる疾患です。
Q,健康や発育にどんな影響がありますか?
A.主に3点の影響があります。
①低身長
一時的に身長がぐんと伸びますが、それを上回るスピードで骨の成熟が進行し、普通よりも早期に骨端線(骨が成長するところ)が閉鎖します。そのため、早く身長の伸びが止まってしまって低身長になる傾向があります。
②女性疾病のリスク
女の子は早期に生理が始まることで、大人の女性と同じように女性ホルモンの影響でイライラや精神的ストレスを抱える場合があります。生理が始まる年齢が早いことで、乳がんや子宮内膜症といったリスクが上がるという報告もあります。
③心理的負荷
この疾患は、体は早く〝大人〟になりますが心の成長は実年齢と変わりません。また、同級生と自分の体を比べて「自分だけ違う」と感じることも。そういったギャップに対する戸惑いが本人にとって心理的ストレスになるでしょう。
Q,病気は発見できますか?
A.小学校で毎年行われている健康診断で分かることもありますが、見逃されていることが多いですね。特に、男の子の思春期の始まりは外見では気づきにくい。ほかの子に比べて成長が早かったけれど、時間が経つと周りが追いつき、安心して相談する機会を逃してしまう、というケースが多いです。
子どもの体で左にあげたような症状がみられたら、一度受診することをオススメします。
Q,治療法はありますか?
A.4週に1回の注射で性ホルモンの分泌を抑えることで二次性徴の進行を止める、という方法があります。骨が成熟するのを抑制することで身長の伸びが止まるのを防ぎ、最終的な成人身長の正常化が期待できます。
Q,最後に、保護者にお伝えしたいことは?
A.過剰な心配は不要です。早めに気づいてきちんと治療を行えば、特に大きな健康被害はありません。ちょっとでも気になると思ったら、まずは気軽に「プロ」に相談してみてください。
女の子
●7歳6カ月までに乳房がふくらみ始める(一般的には7歳6カ月~12歳)。
●8歳までにわき毛、陰毛が生える。
●10歳6カ月までに生理が始まる(一般的には10歳6カ月~14歳)。
男の子
●9歳までに精巣(睾丸)が発育する(一般的には9歳6カ月~13歳6カ月)。
●10歳までに陰毛が生える。
●11歳までにわき毛、ひげが生えたり、声変わりが見られる。
子どもが周りと違う成長速度だと、ついつい焦ってしまいがち。でも、過剰な心配をしすぎず、疑わしい兆候があればまず、この病気に対し専門性のある小児科で一度受診してみるのがいいでしょう。