不動産データ分析会社のエム・アール・シー(東京都千代田区)によると、昨年、関西2府4県で分譲されたタワーマンション(20階以上)の平均価格が初めて1億円を突破した。10年前は4000万円台で、価格は実に2倍以上に。特に「グラングリーン大阪」を中心とした大阪都心部では、短期間で異常な高騰を続けている。このバブル相場の背景に迫った。

「億ション」が当たり前に
「グラングリーン大阪ザ・ノースレジデンス」(大阪市北区)の住戸が関西最高額となる25億円で販売されたことは記憶に新しい。従来の最高額は「ブリリアタワー堂島」(同)の10億8000万円。地主から土地を借り、将来的に土地と建物を返却する定期借地物件「シエリアタワー中之島」(同市福島区)の最高額は4億3999万円。定期借地権は所有権に比べて割安になることが一般的だが、同物件はそんな常識を覆し、第1期の平均販売価格は1億1287万円だったという。少し前まで「億ション」は珍しい存在だったが、今、大阪の都心部において「1億円超え」は当たり前。まさに「タワマンバブル」の様相を呈している。
では、誰がこれらの高額物件を購入しているのか。上場企業や大手企業の経営者が思い浮かぶが、実情は異なる。「2億円を超えると、サラリーマン経営者ではまず買えない。その額をさらっとキャッシュで購入していくのは、大阪地場の中小企業オーナーや不動産業者、アジアを中心とした外国人富裕層。大半は投資目的だ」と話すのは、大阪のタワマン事情に詳しい「TOWERZ」(同市中央区)の芝崎健一氏。

つまり、実需ではなく転売目的で購入する〝マンション転売ヤー〟が相場をけん引しているという。
転売で数千万円の利益
【表1】に過去2年間で新築引き渡しのあったタワマンの法人保有率と転売された住戸の数を示した。既に総戸数の2割以上が転売に出されている物件もある。中古市場での成約件数(所有権移転)も多く、活発な売買が行われている。

「1次転売をさらに2次転売、場合によっては3次転売まで行われる。国内では限界があるが、外国人富裕層がその先を買ってくれる構図になっている」と芝崎氏。
実際、北区のとある物件では、分譲時1億9000万円だった高層階の角住戸が中古市場で2億9200万円で売り出された例も。転売によって、数千万円から数億円の利益が得られることも珍しくないという。
「リスクを背負い、苦労してマンションを企画・販売したデベロッパーにとっては、本来得られた利益を横取りされているわけで、面白いはずがない」と芝崎氏は指摘する。
「転売対策」でさらなる値上げも
こうした転売目的の購入者を価格で締め出そうとする動きもある。三菱地所レジデンスが手がける「ザ・パークハウス 大阪梅田タワー」(同市北区)。第1期の平均坪単価は約500万円だったが、申し込みが殺到し、抽選倍率が20倍を超える住戸もあった。第2期では価格を引き上げ、平均坪単価800万円前後で販売された。担当者は「〝住むために買いたい〟という実需層が手に入れられないのは問題。価格を上げて抽選倍率を下げることで、本当に欲しい人だけに届けることができる」と話す。

専門家は過熱感を否定
一方で、この〝バブル〟がいつ弾けるのかを懸念する声もある。だが、不動産経済研究所(東京都新宿区)の笹原雪恵・大阪事務所⻑は「現時点では過熱しているとは言えない」と冷静に見る。
「土地価格や建築資材、人件費の高騰に加え、転売対策も考慮しないといけないため、デベロッパーも法外な値付けはしていない。むしろ、値上げしても購入意欲は底堅く、今の大阪都心部の新築マンション価格が下がる要素は見当たらない」と分析する。

大阪・関西万博後も、グラングリーン大阪の全面開業、大阪IR、なにわ筋線の開通など、都市開発の波は続く。「万博の年はまだ安かった」と言われる日が、将来本当に来るのかもしれない。