条例施行半年、大阪市でポイ捨て増加の実態明らかに 8割が「喫煙所増設」を支持

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利用実態に応じた柔軟な喫煙所整備求める声

 大阪市が市内全域での路上喫煙を禁止する改正条例を施行してから、まもなく半年。これに加えて大阪府が定めた屋内での喫煙を規制する受動喫煙防止条例の全面施行も相まって、市内では「屋内外ともに喫煙がしづらい」状況が急速に進んでいる。一方でその裏側では、観光地・繁華街を中心にポイ捨て行為の増加や路上喫煙の再発といった課題も顕在化している。

 こうした実態を明らかにすべく、大阪府飲食業生活衛生同業組合は22日、飲食店が条例による打撃を受けている現状を踏まえ、マーケティング会社のスピンに委託して行った「大阪市における喫煙所整備の実態調査」の結果を公表した。調査は全国の自治体から注目を集める大阪府市の喫煙規制を背景に、全国飲食業生活衛生同業組合連合会との連名で行われたもので、全国主要都市の喫煙環境との比較データも含まれている。

喫煙所不足に8割が「増設必要」

 調査では、喫煙者・非喫煙者問わず、アンケートに回答した方の約7割が「喫煙所が足りていない」と回答し、約8割が喫煙所の増設に賛成している。「過料徴収をするにも関わらず喫煙所がないという実効性の伴わない条例では、逆にマナー悪化を招く」との懸念も広がっている。

 特に目立ったのが、なんば駅周辺におけるポイ捨ての多さだ。心斎橋筋商店街、道頓堀川周辺といった観光名所や、飲食店が密集するエリアでは、他都市に比べても突出してポイ捨てが多いという結果が出た。これは、大阪府条例によって飲食店店内での喫煙が難しくなった一方、屋外の喫煙所整備が追いついていないことが一因と考えられる。

 大阪市では現在、約380か所の喫煙所を整備済みとされるが、その多くは民間施設や既存のパチンコ店で、公費による「公設喫煙所」は全体の5分の1にも満たない。もともと条例施行時点で想定されていた「路上喫煙者の増加」への対応策が不十分だったことが、現状の混乱を招いたとみられる。

「整備とマナー」は両輪

 調査では、市街地整備の進んでいる梅田駅周辺ではポイ捨てが比較的少なく、逆に繁華街や観光地では顕著に多いというエリア別の傾向も確認された。喫煙所の有無とポイ捨て件数の間には一定の相関があるとされ、「整備がなされている場所では喫煙者もルールを守る傾向にある」と分析されている。

 大阪市議会6月定例会では、喫煙所整備に関する陳情が23件提出されており、空白地帯での喫煙所設置の必要性や、民間施設への補助制度の再開・拡充を求める声が相次いだ。市は、夏頃を目途に中間取りまとめを行い、令和7年度の新たな補助事業の募集を速やかに開始する意思を示している。

 調査結果を受け、スピンは「喫煙所の整備は一律の配置ではなく、人流や利用実態に基づく柔軟な対応が求められる」と指摘。また、大阪府飲食業生活衛生同業組合は「特に市内全域において2重の喫煙規制となっている大阪市において、引き続き行政の責務として必要な場所に十分な数の喫煙所が整備されていく事を期待する」と締めくくっている。

人流と環境の共存を

 路上喫煙やポイ捨てを抑止するためには、条例による禁止だけでは限界がある。ルールと受け皿(喫煙所整備)の〝両輪〟がなければ、逆に公共空間の美化や安全性は損なわれるというのが、今回の調査が示した明確な結論である。

 インバウンド需要が回復しつつある中、観光地としての大阪の印象を左右する要素としても、公共の喫煙環境の整備は避けて通れない。