【大学生が記者に挑戦】学生視点で「退職代行」業者を突撃取材! 浮かび上がる〝辞める理由〟とは?

 大阪国際大学と週刊大阪日日新聞が協働し、大学生たちが新聞記者の仕事を実践する「PBL演習Ⅲ」(担当教員:尾添侑太准教授)を同大学で実施。学生15人が7グループに分かれ、自分たちで見つけたテーマについて、人と会って取材し、記事を作成した。今回は、これから就職活動を行う学生の視点から「退職代行」業者に取材をした「退職代行から透ける〝辞める理由〟」を紹介する。

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「退職代行」から透ける〝辞める理由〟

リモート取材の様子

 今や全世代に知名度が広がると同時に利用する現役社員数が増えている「退職代行」サービス。本人に代わって退職通告する事が広がることで労働や就職のあり方に大きな変化をもたらせている。そこで大学3年生で就職活動真っただ中の〝自分の将来像〟を模索している現役学生目線で事業構造の背景を知ると共に、サービス会社側から見た現代企業の問題点を知るため、生の声を聞くインタビューを行った。 (生島昭弥、津田結里)

 退職代行業は労働者が務め先を辞めたいと感じた時に連絡し、文字通り交渉の代行を依頼する。すると受け付け手続きは概ね30分程度で済み、早ければ1時間以内に「成約」となり企業へのアプローチを始めてくれる。サービスへのLINE登録や「成約」決済は朝7~8時の出勤時タイミングが最も多く、次に夕方からの6~8時までの仕事終わりタイミングが多い。勤務中よりも職場や仕事先から離れている時の方がアクセスしやすいのは納得だ。

 就活結果に日々一喜一憂し悩みも多い我々が気になるのは「依頼するのは、どのような職種勤務者が多いのか?」という点だ。そこで退職代行「Jobs」の運営会社「アレス」の佐藤英一郎・事業責任者にインタビューした。

 気になっている点をいきなり聞いたら「1番多いのが営業(外回り)」と即答し、構成比などのデータも見せてくれた。その中味は「営業(外回り)」の構成比は16%。続いて「工場等(屋内)」が10%、「事務・総務系」7%が続く。最多の「営業」がなぜ多いのか? 聞けば「ノルマが厳しいことや自分と他の社員の売上高を比較され精神的に参ってしまったり、上司の言動をパワハラと感じた」など、ほぼ予想通りの回答を得た。また他職種も共通して多い退職希望理由として、上司言動と企業発信が違ったり、社内コミュニケーションのミスマッチが挙げられた。私たち就活生がチェックしていきたい企業評価ポイントとして「企業がしっかりと時代に合った企業体質の更新をしているか?」が大事だと感じた。

 「印象に残っている具体例」を教えてもらうと、こっそり金品を横領している社員が「辞めれば全てチャラにできる」と安易に考え依頼してきたケースがあったそうだ。この人は最終的に懲戒解雇になった。

 同社では「辞める側の社員だけが得するのは良くない」と話し、企業指針として「常に中立の立場で退職代行事業を行う」を挙げる。また退職だけを勧める訳でなく、相談して対応策を考えたり、いったん休職させたりと、辞めること自体が「目的」なのではなく、自分を壊さないための一つの「手段」だと納得できた。

 最後に退職代行をする立場としての目線から「大学生にどのような就職先を選べばよいのか?」を教えてもらった。近頃の会社説明会では企業が「長所と短所」を正直の示す傾向になってきていることから、「会社説明の時点でいい所ばかり並べる企業は信用しない方が良い」と話してくれた。依頼者に辞めたくなった状況を聞いていると「働く会社を間違えている」と感じることが多いそうだ。実際は「ミスマッチは原因の60%程度で、本人と企業に20%ずつぐらい問題がある」のが実感だそうだ。

 就活で企業と向き合う立場の学生は、大手企業だけでなく小さな会社も調べることが大切。自分に合う職種をしっかり確かめ、学生時代になるべく多くのインターンシップに足を運んで実体験することで、働く際のミスマッチを減らす事が可能な気がした。