〝万博おばあちゃん〟の毎日通い、世界記録達成 648日で万博を駆け抜ける

 毎日、万博会場に通うことで有名になった〝万博おばあちゃん〟こと、山田外美代さん(76)が、「万博を訪れた最多日数」でギネス世界記録に認定され、その認定式が9月5日にスイスパビリオンで執り行われた。

 1970年の大阪万博を皮切りに愛知万博で全日通い一躍有名になった後も、サラゴサ万博(スペイン)や上海万博、ミラノ万博、アスタナ万博(カザフスタン)、ドバイ万博など合計11もの様々な万博を駆け抜けて、9月5日で万博を訪問した日数が648日に達したとして記録認定された。

 来場日数を数えるには、自己申告だけでは認められず、日付が分かる写真や入場チケットなど、実際に訪れたことを示す証拠を提出する必要がある。そのため、健康づくりを目的に通い始めた万博では、記録が残っていない日も多く、実際の訪問日数は公表されているよりもさらに多いという。

 万博の良さに関して、山田さんは「毎日、違うことが待っている。スタッフと触れ合うことの楽しさを教えてくれた。どこのパビリオンがすてきだとかではなく、会場にきて、スタッフとコミュニケーションを取って、エネルギーを肌で感じることで元気になる。健康になるために始めた万博通いだが、648日後には心身ともに良くなっているし、コツコツ続けることでギネス世界記録という素晴らしいものをいただくこともできて、続けることの大切さも学んだ。そういうことを子どもたちに伝えていきたい」とコメントした。

 毎日万博へ通っていることや、全館制覇、などが取り沙汰されることが多い山田さんだが、会場へ行くことで、たくさんのパビリオンでスタッフと仲良くなり、コミュニケーションをとって友好関係を築いてきていることがわかる。
 「パビリオンを何カ所訪れたか」というような表面的な話ではなく、万博が持つ大きなメリットの一つがパスポートなしで世界中の人と出会って、その国や国民について知れること、これを形にしてきたのが山田さんなのだ。

各国代表に混じって「砂ンプリラリー」の式典に参加する山田さん(右から2番目)

 その証拠に今回の認定式にはスイスパビリオンの館長以外にオーストラリアやカナダなど、山田さんが特に仲良くしているパビリオンの館長が友人として参加していた。

 筆者も取材で様々なパビリオンに行くが、館長に会うことはそう簡単ではないし、とても忙しい立場の人たちなので、こうやって時間を割いて来てくれるということは、本当に人間関係ができているのだろう。

 万博会場に来て、パビリオンを見て回っても、パビリオン内のスタッフと話をすることもなく通り過ぎていけば、こういう結果にはならない。万博では「一期一会」という言葉を時々聞くが、どこで誰と出会うかわからない楽しさ、そしてそこから広がる無限の可能性があるのが万博だ。今回の山田さんのギネス世界記録は、そんなことを感じさせてくれた。

 2005年からスイスパビリオンの運営に関わっている館長のマヌエル・サルクリさんにも話しを聞いてみたところ、「過去の万博から振り返っても、毎日万博会場に来る人は山田さん以外にいない。仕事の合間に休みをとって全ての万博に数週間単位で来ている日本人が何人かいることは知っているが、日本人以外ではそういう人は知らない」と日本人のバイタリティーと万博愛に圧倒されていた。