演歌の枠を超えた!シンガーソング・ライター、おかゆがバッハに詞を乗せた新境地

 おんな流し出身のシンガーソング・ライター、おかゆが新曲「ジモンジトウ」PRでラジオ局やファンミーティングなどを関西で精力的にこなしている。デビュー以来6年間所属した大手芸能プロ「サンミュージック」から独立。自身が社長を務める〝ゆかプロモーション〟を設立。演歌・歌謡曲界から一歩空間を取り、念願だった〝今の時代に必要な普遍的な曲〟の世界へと踏み出した。

 2年前の前々作「渋谷のマリア」、昨年の前作「渋谷ぼっちの歌謡曲」ともオリコン演歌・歌謡週間ランキングで1位を獲得。「今年は3部作の完結編で3連覇?」と周囲は期待したが、全く異なる『自問自答』をテーマに据えた。誰もが日々抱く自身との葛藤を素直に表現。演歌・歌謡曲ジャンルにとらわれない新たな一歩を踏み出した証しともなる楽曲に仕上がった。

愛用のギターを手にするとおかゆの表情が引き締まる

 カップリングを替えて3シングルCD同時発売は売れっ子の証明。しかしこの3枚がどれもとんでもなく攻めている。まず「G線上盤」の〝G線上のマリア〟は作詞こそおかゆ自身だが、作曲は〝音楽の父〟ヨハン・セバスチャン・バッハだからびっくり。聴いて2度驚かされる、あの〝G線上のアリア〟ではないか! 「ぜひ歌ってみたくて詞を付けてみた。とんでもない音の使い方でこれまでのどの曲より難しい。バッハの天才性を改めて痛感」と楽しそう。次の「シブヨル盤」は大好きな渋谷の夜をテーマに若い2人の恋心が揺れる。「渋谷シリーズの3作目はコレですね。でも完結じゃない、渋谷が舞台の私の歌はまだまだ続きます」とキッパリ。ランキングを気にせず物作りに徹した清々しさが伝わる。最後の「桑名盤」は昨年10日間通しでワンマンライブを行った三重県桑名市の長島温泉「湯あみの島」での経験から。「1カ所にあんなに長くとどまって朝と夜は温泉に入り、周辺の自然にいやされた事は初めての経験、心がほぐれて開かれ曲がフッと降りてきた。露天風呂の中で出てきたフレーズを忘れないように口ずさみながらシャンプーしていました」と昭和歌謡の味わいを感じさせる仕上がりに手応えを感じている。

おかゆ新作CD「ジモンジトウ」G線上盤ジャケット

 「長年流しで全国を回り、お客さまのリクエストに応え即興で歌う日々でした。だから今回もCD3枚を同時に出させてもらって〝どの盤の私が最も支持を得ているのか?〟はとても興味がある。ファンのあっての私ですから、ぜひ反応が知りたいんです」と話す。

 プロデビュー以来、毎年のCD発売はヒットを狙うプレッシャーで押しつぶされそうになりながらもがいてきた。独立した今年は逆に肩の力が抜けて「歌いたいものを歌っている」と胸を張れる。「独りですから全部自分に返ってくる。この曲でファンと一緒に頑張ろう、と素直に思えます」とさわやかだ。

おかゆ新作CD「ジモンジトウ」シブヨル盤ジャケット

 既にファンクラブメンバーと一緒にバスツアーに行って交流、今後もディナーライブや本拠地渋谷でのライブなど〝素の自分〟を見て聞いてもらう機会を増やす。「流しを続けたおかげでお話しするのが好きに。テレビやラジオは勉強になるしスタッフがチームを組み番組を作る素晴らしさを体感できます。でも私の原点はあくまでギターを抱えてお客さまの前に出て歌うこと」と揺らぎない。

 それでも今回のCDジャケットの写真が話題になると「ご覧になってどうすか? 流しの時はお酒の場が多いのでパンツルックに革ジャンなど男っぽい姿が多かったので…」とちょっとはにかんで照れた。

おかゆ新作CD「ジモンジトウ」桑名盤ジャケット

(畑山博史)