
採用に悩む企業が人材確保を目的に学生の費用面をサポートする仕組みを考案した大阪市西区の「SPONSORS BOOST(スポンサーズブースト)」。代表の西里将志さんが学生時代に経験した悔しい思い出がアイデアの源泉だった。
(竹居 真樹)
学生時代の悩みから始まった着想
「大学時代、部費が払えずに辞めていく仲間がいた」。そう西里さんは語る。九州大学ラクロス部で90人規模の部をまとめる中、経済的理由で競技を諦める学生の存在に課題を感じていた。
社会人になり東京海上日動で働いた後、独立した西里さんは、今度は企業の立場から「学生と出会う機会が少ない」という採用面での壁を実感する。この二つのギャップを埋めるべく立ち上げたのが、大学部活動と企業を結ぶマッチングサービスだ。学生には活動資金を、企業には採用に直結する出会いを提供する、新しい支援と採用のかたちである。
このサービスは、企業が大学の部活動に月額3万円からスポンサーとして支援し、リクルーティング目的で継続的な交流を持つというもの。特徴は「広告目的ではなく採用に特化している点」だ。ロゴ露出や宣伝効果ではなく、人事部の予算から出資され、企業の採用戦略の一環として位置づけられている。
年間で12回のオンライン交流と、4回のオフラインイベントの機会を持つことで、学生との信頼関係を築き、採用につなげる。キャリア相談会や食事会、また馬術部と一緒に乗馬体験をする企業もあり、型にとらわれない接点づくりが特徴だ。
すでに146校・614団体が登録しており、スポーツ系から文化系、マイナーなサバイバルゲーム部まで幅広い分野が対象となっている。
企業にとっての主な利点は「早期接点」と「直接的な採用ルート」だ。説明会やナビサイトでは届きにくい優秀な学生と継続的に関係を構築できる。また、SDGsの観点からも「挑戦する若者を支援する企業」としての社会的評価が高まる。
一方の学生側にとっては、金銭的支援が最も大きなメリットだ。遠征費や道具購入にかかる負担を軽減でき、バイトに追われず部活動に専念できる。「バイト代のほとんどが部活に消えていた。スポンサー費用で新入生の道具が買えた」と学生の声も。さらに、社会人との交流を通じて、卒業後のキャリアについて考えるきっかけにもなっている。
「挑戦する若者を支援しながら採用する―そんな文化を当たり前にしたい」。西里さんはこの仕組みに、社会性と経済性の両立という企業理念を込めている。リクルーティングの費用が、学生の未来を支える資金になるという好循環は、採用の新たな選択肢として注目を集めつつある。