経済

「十三船着場」開業など 再開発が進む十三に注目

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「住みたい街ランキング」の上位に

 梅田までわずか1駅という利便性を誇りながら、長年開発が遅れていた大阪・十三エリアが今、注目を集めている。「官・民・学」が連携した複合施設の建設や阪急の新線・新駅構想、淀川河川敷の整備など再開発が加速している。十三がどのように変わろうとしているのかをまとめた。

阪急阪神不動産による地上39階建て、総戸数712戸のタワーマンション「ジオタワー大阪十三」の完成予想図(阪急阪神不動産提供)

最上階は3.6億円超

 大阪梅田駅から阪急電車に乗り込み、淀川を渡ると、進行方向の右側に一際背の高い工事中の建物が目に飛び込んでくる。ここはもと淀川区役所跡地で「官・民・学」が連携した再開発が行われ、十三の新たなランドマークになる場所だ。再開発の目玉は、阪急阪神不動産が分譲する地上39階建て、総戸数712戸のタワーマンション「ジオタワー大阪十三」。同社が単独で開発するマンションとしては最大規模となる。建物内には、市立図書館、保育学童施設、スーパーマーケットなども入居し、広く地域に開かれた複合施設となる計画だ。1階には約2400平方㍍の緑豊かな公開空地を設け、多世代が集い、新たな交流を生み出すことが期待されている。

地域交流の場としての活用が期待される公開空地

 同社の開発担当者は「十三を西宮北口と争う〝住みたい街ランキング〟の上位に押し上げたい」と展望。「街は人が住むことで活気が出る。本件が十三を〝住む街〟にする起爆剤となり、阪急沿線の核として育てていきたい」と語気を強める。

 「予想を大幅に上回る反響で、すでに320戸を超える契約をいただいた。ファミリーやDINKs(夫婦のみ世帯)、シニアなど幅広い世代のお客様から関心を寄せていただいていることに十三のポテンシャルを感じている」と話すのは、同社で販売を担当する井藤綾音さん。最上階の角部屋(163平方㍍・3LDK)は、3億6000万円超で契約が成立したというから驚きだ。顧客の購入動機に共通しているのは、十三という街に対する「未来への期待感」だという。

新大阪、関空に直通

 十三は阪急3線のハブターミナルとして高い利便性を誇っている。阪急京都線を使えば、大阪梅田駅までわずか1駅。神戸・宝塚・京都全てにダイレクトアクセスできるのが最大の特徴だ。

 十三は、すでに鉄道ネットワークの結節点として重要な役割を担っているが、近い将来、新大阪と関空に直通し、さらに便利になる見通しだ。阪急は、十三から新大阪駅とJR大阪駅の地下ホームを結ぶ2本の連絡線の開業を検討している。2031年に開業予定のなにわ筋線を経由し、関空まで乗り入れる方針だ。

 大阪府・市が共同で設置した新大阪駅周辺地域まちづくり検討部会において、十三駅エリアは「新大阪駅周辺地域のサブ拠点」「地域のまちづくりにおける中心的な拠点」として位置づけられている。

 同部会の資料によると、新線の十三駅は、既存駅北側の阪急用地を活用し、地下にホームが設置される予定。阪急は、40年を目処に十三駅の直上に高層ビルの建設を検討している。駅の北側・南側にある3カ所の用地を含めた一体的な都市開発プロジェクトを展開し、にぎわいや交流機能を強化する計画も検討されている。

河川敷に新たな拠点

 十三駅からほど近い、淀川の河川敷でも整備が進んでいる。先月16日には「十三船着場」が開業。最大約2㍍の水位差を調整し、船のエレベーターの役割を果たす国内最大規模の閘門 (こうもん)、「淀川ゲートウェイ」も利用を開始した。大阪・関西万博会場となる夢洲(ゆめしま)や枚方、京都と同船着場を船で結ぶ社会実験の実施も検討されている。また、地震などの災害で陸上交通網が麻痺(まひ)した際に、救援物資や資材などを船で運ぶ拠点としても活用される予定だ。

十三船着場の開業を祝う関係者ら(国土交通省近畿地方整備局提供)

 同船着場に隣接する河川公園と堤防上には民間事業者が整備するにぎわい施設が新設予定。淀川や梅田の都市景観を眺めながらBBQを楽しむことができるエリアや、バラエティー豊かなグルメが集結する屋台エリアなどを計画する。

淀川の堤防上に計画される屋台エリア「淀川つつみ市 ミナモ十三」(RETOWN提供)

 淀川区役所が策定した「淀川区将来ビジョン2025」によると、世帯数は市内24行政区最多だが「10代未満と30代が転出超過で、子育て世帯に住み続けたいと思ってもらえる街づくりが課題」と分析している。同区政策企画課の瀧谷祐介係長は「市立図書館や保育学童施設、淀川の河川敷などを整備することにより、新たな十三の魅力を発信していきたい」と意気込んでいる。