大阪市計画調整局 開発調整部長にインタビュー
商業・ビジネスでにぎわい、交通利便性の高いエリア・京橋。今、万博後における大阪の成長・まちづくり戦略として、京橋が注目されている。同エリアの開発・街づくり計画に取り組む「京橋駅周辺地域部会」の事務局を担う大阪市計画調整局 開発調整部の部長、正垣啓之さんに話を聞いた。
京橋はどんな街?
交通の利便性がかなり高く、ポテンシャルのあるエリアといえます。JR大阪環状線で大阪駅まで3駅というだけでなく、JR学研都市線・東西線は京都の木津駅から兵庫の尼崎駅まで、3府県が直通でつながっています。京阪電車もあり、京都市随一の繁華街である四条エリアへ電車一本でアクセスできます。
現在進めている、京橋エリアのまちづくり方針について
大阪の都心といえば「キタ」と「ミナミ」。今までは御堂筋沿線をなぞるこれらのエリアが「南北都市軸」として発展してきました。また、天王寺や新大阪もターミナルとして発展しています。大阪市は「まちづくりグランドデザイン」でも描いているように、今「東西都市軸」の強化を目指しています。「ニシ」は、大阪・関西万博の会場となり、今後JR施設もできる夢洲と、咲洲・舞洲。そして「ヒガシの拠点」として、京橋を含む大阪城公園周辺地域を据えています。
これまで、京橋エリア、大阪ビジネスパークエリア、森之宮(大阪城東部)エリアはそれぞれで街づくりを進めてきました。これからさらなる国際競争力の向上に向け、大阪城公園を訪れる観光客の地域全体への回遊性向上によるにぎわい創出や、各エリアのイノベーション施設などの連携によるビジネス環境の充実等といった観点から、3つのエリアを一体的に捉えて街づくりを進めていくことが必要と考えています。
そして、これらの街づくりの目標として掲げているキーワードは、「観光」「イノベーション」「交流促進」の3点です。
まず、「観光」について聞かせてください
現在、大阪城公園の観光客は年間1100万人を超えますが、その多くは森ノ宮駅や谷町四丁目駅など公園の南側から天守閣へ向かい、そのまま元の駅へ戻り、そこから他の地域へ移動しています。そこで、公園の北・東側まで回遊してもらうために歩行者ネットワークの構築を目指しています。
また、足を運んでもらうためには「目的」が必要で、各エリアで観光スポットとしての魅力向上が必要ではないかと考えています。
森之宮エリアの大阪メトロ用地では、アリーナ・ホール等を中心とした複合開発を予定しており、現在、暫定施設として体験型テーマパーク「e-METRO MOBILITY TOWN」をオープンしています。
京橋については、現在も飲食や買い物の場としてにぎわっていますが、「FULALI KYOBASHI」が暫定利用施設として設置されている「イオン京橋店」跡地での再開発や、京阪ホールディングスによる京阪京橋駅の再開発を検討していくとの報道もあり、民間の都市開発のなかで観光に資する施設等の設置を期待しているところです。
2点目の「イノベーション」はどういった内容でしょうか?
大阪府市では、新たな成長戦略として「Beyond EXPO 2025」の検討を進めています。この柱の一つとしてイノベーションを掲げており、その一環としても進めています。地域の特性を生かし、ICTを軸にしたイノベーションの拠点にできればと考えているところです。具体的には、これまでの大阪ビジネスパークでのICT関連を中心とした大企業に加えて、京橋エリアへ2022年に移転したNTT西日本本社とその社屋内にあるオープンイノベーション施設「QUINT BRIDGE」。大阪公立大に新設された「情報学研究科」も森之宮へ移転予定と、イノベーションにかかわる施設が集まってきています。それらをつなぎ、交流・循環を促進する仕組みを構築することで、新たなアイデアが生まれるような環境をつくっていけないかと考えています。
3点目の「交流促進」とは、何の交流でしょうか?
「人・モノ・情報の交流の促進」です。先に述べた2点を促進するために必要であり、インフラ整備などを通じて、地域内の観光客のより一層の回遊性の向上や特徴あるエリアの人材・アイデアの地域内や国内外との交流を促進していきたいと考えています。
例えば、森之宮エリアには、大阪公立大学森之宮キャンパスの最寄りにもなる「(仮称)森之宮新駅」が28年春に開業を予定しています。駅や駅前空間が整備されることにより、多様な交通手段を受容できる交通結節点となることを期待しています。
また、歩行者の回遊性を高めるため、大阪公立大からJR大阪城公園駅、さらに、大阪ビジネスパーク、京橋駅にかけて歩行者ネットワークの構築できればと思います。さらに豊里矢田線の整備促進により、関西広域からの車でのアクセス向上も目指します。
改めて、これからの京橋についての期待をお聞かせください
京橋は世界や関西広域拠点をつなぐ「ヒガシの玄関口」として、また特徴ある周辺エリアをつなぐ「ハブ」として重要な役割を担っています。また、観光やイノベーション施策については、大阪・関西万博の思い〝万博レガシー〟を継承するという役割もあります。お話しした計画内容はまだ素案の段階ですが、引き続き、民間事業者や地域の方、街づくりに関わる関係者の皆様と対話しながら、京橋駅周辺を含む大阪城公園周辺地域が一体となった計画を策定していきたいです。
京橋エリアの開発予定まとめ
京橋エリアの開発情報で、現在情報が公表されているものについてまとめた。
▼京橋公園&京橋コムズガーデン(25年4月18日再オープン予定)
公園と商業施設一体型というのもあり、同時にリニューアルを行っている。4月に開幕する大阪・関西万博に合わせて4月18日に再オープンを予定。公園は公園全体の見通しがよくなり、街にひらけた空間となる予定だ。
▼「イオン京橋店」跡地再開発(時期未定)
2019年に惜しまれつつ閉館した「イオン京橋店」。その前身である「ダイエー京橋店」時代も合わせて48年間、地域住民に愛された施設だ。その場所は再開発エリアとしてイオンモールが所有しているが開発時期は未定。開発までの暫定利用施設として現在は「FULALI KYOBASHI」が設置されている。
▼京阪電車「京橋」駅再開発(未定)
京阪ホールディングスは2030年までに京阪「京橋」駅の再開発に着手する方針だ(2023年12月 産経新聞の報道から)。「京阪モール」などの商業施設が入居する現在のビル、必要に応じて隣接するJR「京橋」駅との間の土地も賃借や買収を検討しているとのこと。具体的な内容やスケジュールはまだ情報が出ていないが、京橋駅とその上部に新たな高層ビルを建設する方向だ。ビルにはオフィスやホテル、商業施設などが入居する複合型ビルが想定され、マンションなどの住居
が入る可能性もあるという。