【外から見た日本】日米比較 投資の土壌

Spyce Media LLC 代表 岡野 健将

Spyce Media LLC 代表 岡野健将氏

 投資好きなアメリカ。貯金好きな日本。一言で言ってしまうと日米比較はこれで言い表せてしまうかもしれません。 皆さんはボーナスを貰ったらどうしますか? 多くが将来のために貯金すると答えるのではないでしょうか? しかし、考えてみて下さい。今、銀行の預金金利はほぼ0に近く、預金額が増えることはありません。逆に手数料アップや昨今のインフレを考えると。銀行にお金を預けておくと実質減っていってしまいます。

 現在、日本人の資産の約半分は現預金。アメリカ人の資産に占める現預金の割合は15%弱で、約50%が株(投資信託含)や債券への投資です。ではアメリカ人は皆が皆「投資をしているのか」というとそうではなく、全体で見ると収入の多い人ほど投資に積極的で投資額も多く、逆に収入の少ない人は生活に必死で投資するゆとりもありません。

 それでも日本と比べると幅広い収入層の人が投資をしているのは事実です。お金持ちだから投資するのではなく、お金持ちになるため、資産を増やすために投資しているのです。日本と比べるとリスクを正しく理解し、投資について学ぶ機会が多く、お金の話をする機会もずっと多いからだと思います。

 1つに、アメリカでは所得のある人は各自で確定申告をしなければいけないので、多くの人が税理士と接点を持ちます。その税理士も日本と同様に杓子定規的でなく、ファイナンシャルプランナーの様に節税と併せて踏み込んだ投資のアドバイスもしてくれます。他にも学生時代に経済学の授業で株式投資のシミュレーションをすることもあります。私も大学の授業で仮想の1000㌦を与えられて、好きな株を売買して学期末に誰が一番利益を出すか、と言う課題がありました。その授業ではなぜその株式を売買したのか説明する必要があったので、優秀な結果を出した生徒の説明から多くを学ぶ事ができました。実戦という観点では、事業を起こす人が多いこと、起業する時に周りから投資を募って資金を集める人がたくさんいること、そして実際に投資をしている人が周りにたくさんいるので、話を聞く機会が多いことなどが投資しやすくしている要因だと思います。

 社会の仕組みからみるとアメリカは「自分の面倒は自分で見る」という考えが浸透しているので、年金だけで生活しようと思っておらず、自分で資産を築いておこうという考えもあります。

 当然、投資して損をする人はいます。そして儲ける人も。ただ日本と違って儲けた人はその事を隠さず人に話します。お金、ましてや投資で儲けたなどという話は日本では〝大っぴらにするものではない〟という風潮があるかと思いますが、アメリカではそんなことはありません。仲間内や友人同士で投資の話をすることはごく普通のことです。村上世彰やホリエモン、勝間和代などが一般受けしないのもその現れかもしれません。こういう風潮が変わっていかないと日本では投資で資産を増やすという文化は広がっていかないのではないでしょうか?

【プロフィル】 State University of New York @Binghamton卒業。経営学専攻。ニューヨーク市でメディア業界に就職。その後現地にて起業。「世界まるみえ」や「情熱大陸」、「ブロードキャスター」、「全米オープンテニス中継」などの番組製作に携わる。帰国後、Discovery ChannelやCNA等のアジアの放送局と番組製作。経産省や大阪市等でセミナー講師を担当。文化庁や観光庁のクールジャパン系プロジェクトでもプロデューサーとして活動。