「最近、落語がどんどん好きになる」 桂文珍が独演会

上方落語家、桂文珍(75)が〝吉例88〟こと8月8日に開催の第42 回独演会をなんばグランド花月(NGK)で開催。約900席満員の観客を前に終演の挨拶の際には「秋にはフェスティバルホールで芸歴55周年を記念した独演会ザ・ヒットパレードをやります」と宣言。全2700席の大会場を満席にする決意を示した。

満面の笑顔で高座を務める桂文珍

「吉例88」では、演じる噺家が少ない「雁風呂(がんぶろ)」に挑戦。水戸黄門が上方へのお忍び道中で見掛けた見事なびょうぶ絵を巡り、大阪で淀屋橋を私財で架けた豪商として名高い淀屋の二代目と出会う展開。江戸落語名人として名高い6代目三遊亭円生が得意としたが、笑いどころが少なく現代では演ほとんど演じられる事がない。「(桂)米朝師匠が2度ほどおやりになって聴かせどころが多いネタ。上方が舞台の噺で、私もぜひやってみたかった」と文珍。

江戸落語らしい軽妙な展開で笑いを取った柳家三三

落語が絶滅した近未来を描く新作創作「落語記念日」と恋わずらいの若い2人を再会させるため出入り職人が奔走する「崇徳院」の計3席を披露。「崇徳院は学生時代以来と違うかな? 最近、落語がどんどん好きになる。75歳にもなって3席もやってね。落語は悪女と同じ、深情けやね」と自己分析。

ゲストの江戸落語真打ち、柳家三三(50)は長野・善光寺を舞台した「御血脈」を軽いタッチで演じ盛んな拍手を受けた。

吉例88を終えホッとした表情で大入袋を掲げる桂文珍

終演後、囲み取材に応じた文珍はNGKの3倍に相当するフェスでの公演について「ゲストは(立川)志の輔さん。私の演題は、ヒットパレードらしくいつもリクエストの多い『デジタル難民』『老婆の休日』と米朝師匠に稽古を付けて頂いた『地獄八景亡者戯』をやります」と公表。広い会場だけに映像などの活用も質問されたが「芸歴55周年ですから、過去の写真などを見て頂くのもいいかも」としながらも、「落語では何も使いませんよ。私は2万何千人が入った名古屋ドームでマルチビジョン使いながらやった事あるんですが、笑いがズレるんですな。だから話芸だけで、それが腕ですがな!」と右手の扇で左腕をポンポン。

11月のザ・ヒットパレードのポスターを示す桂文珍

舞台でも日常でも、歯に衣着せぬ本音しゃべりが真骨頂。そのため色々と誤解される事も多いが、含んだ「毒」さえも味付けにしてしまうのが喜寿に近い落語家の芸そのものなのだ。

 (畑山博史)