国内には空き家、再建築不可、共有で所有している不動産などの管理、所有で困っている〝ワケあり不動産〟が50%あると見込まれている。さらに4月から不動産の相続登記が義務化され、ワケあり不動産市場はさらに拡大しそうだ。こうした背景もあり、最近ではワケあり不動産をバリューアップして再度、市場に流通させるビジネスも出てきた。
相続登記義務化などによる今後のワケあり不動産市場の予測戸数
共有持分 ………………1300万戸
再建築不可 ………………600万戸
低地、借地 ………………100万戸
事故物件 …………………500万戸
空き家 …………………1000万戸
所有者不明土地 国土の20%相当
少子高齢化や都市部への人口集中で「空き家」「共有持ち分」「再建築不可」などの不動産は増える一方だ。さらに高齢者の孤独死などによる事故物件も多い。国土交通省の調査によると、所有者不明の土地は国土の2割に相当する。
こうした中で、今年4月に義務化された相続登記。親族と不動産を相続していた事実を知る所有者が増えることで、ワケあり不動産は増えることが予想される。
「相続の際、親族間では話が進まないケースがある」。こう話すのは、ワケあり不動産をバリューアップして再度市場に流通させている不動産会社「ネクスウィル」(東京)の丸岡智幸社長だ。
例えば、親の不動産をABCの3人の子が相続する場合、不動産の相続する権利は三等分されるが、Aは「売りたい」、残りのBCが「売りたくない」というケースは多々ある。この場合、BCがAに3分の1を現金で支払えば話はまとまるが、そのお金を用意する必要があるなど、現実には難しい。
こうした際に、同社はAから3分の1を買い取り、相続人の一人となる手法を採用。丸岡社長は「弊社が間に入って権利関係をどうするか、相談させてもらっている。最終的には弊社が全部買い取るケースや持っている人に買い取ってもらうケースもある」という。
「きょうだい間で進まない話も、われわれのような第3者が相続人として介入することで話もまとまりやすい」(丸岡社長)
相続人が複数人いて、音信不通になっているケースもよく聞くが、その場合はどうするのか。
丸岡社長は「その場合も売却意思のある相続人の持ち分だけを買い取った後、共有者の居場所を割り出して買い取る。ただ、手間がかかるし、利幅も少ないから他の不動産会社はやらない」という。
再建築不可を可に変える
一方、再建築不可の物件はどうか。一般にはこうした物件の相場はなく、二束三文でたたきき売るしかないと思われている。
丸岡社長は「例えば、隣地から2㍍接道するように土地を買わせてもらうと、前面の土地をまるまる買い取らせてもらうとかを交渉し、再建築できるようにすることで価値を高め、再度市場に流通させている」と説明する。
離婚時見据えないペアローン
相続のトラブルに加え、最近では高額物件を夫婦で購入するペアローンのトラブルも多い。夫婦で半分ずつローンを組む手法だが、象徴的なのは5、10年後に離婚してしまうケースだ。
「どちらが住宅を所有するかの話になり、所有する側は相手の残りのローンをかぶらないといけない。売却するにしても不動産価格が上がっていれば残債を完済できるのだが…」と丸岡社長は明かしながら、「販売時に不動産業者がペアローンの説明をしすぎ。相続のでも『誰かが売りたくない』と言えば、『とりあえず安易に共有名義にしておきましょう』とその場しのぎをする。本当は現金化して分ければいい。もめたときに解決する不動産業者がいない」と問題点を指摘する。
空き家問題解決へ
空き家が年々増加の一途をたどっている。この問題を解決するための相続登記が義務化されたが、この義務化によって処分に困る空き家問題がより顕在化されることが予想される。
このため、同社では空き家マッチングサイト「空き家のURI・KAI」を開設し、無駄な仲介を省いて、売りたい人と買いたい人をマッチングさせるプラットフォームを提供している。
同社では現在、年間100~120件のワケあり物件を解決に導いている。「不動産会社でも聞きなれない共有持ち分という問題が今後、ますます増えていく。ワケあり物件の問題を解決していくことで、社会問題となっている空き家の問題を解決していきたい」と話している。