中国人相手の不動産販売が急拡大 「人気は東京ベイエリアのタワマン」

 国土交通省が行った「令和2年度海外投資家アンケート調査」の結果、日本の不動産投資市場で、海外投資家が占める割合が全体の3割を占めたことが分かった。これは金融危機以降最大だ。「買いたい需要が止まらない」とうれしい悲鳴をあげる会社、YAKホールディングス(東京都台東区)水神怜良(みずがみさとよし)氏に話を聞いた。

YAKが中国人投資家に販売したマンション
YAKが中国人投資家に販売したマンション

─外国人が日本の不動産を購入しているという話を耳にするが、冒頭で述べたとおり、全体の3割も占めている。貴社では何件くらい外国人に対して国内不動産を販売しているのか。

 年間600件の売買仲介を行っている。そのほか、販売した不動産の管理や不動産の買い取り再販、民泊、貸金などを手掛けており、すべて外国人向けにサービスを提供している。

─外国人に販売を特化しているとは、外国との所縁などがあるのか。

 2003年に中国の無錫(むしゃく)という都市から留学生として来日し、立命館大のびわこ・くさつキャンパスで勉強した。新卒でIT会社に就職しながら、副業で不動産会社の仲介・売買を経験した。日本の不動産会社は競争が激しく、大手が牛耳っていることを身にしみて感じた。
 日本人相手に参入しても勝ち目がないことは目に見えていたので、まずは日本国内で暮らす外国人を相手に賃貸仲介、売買をしてみようと、16年会社をYAKを立ち上げた。現在、ホールディングス体制で展開している。

─在日外国人と取引する中で、多くの外国人がローンを組めないことに着目された。

 私のように来日してから就職する人が増える一方、「そろそろマンションを買いたい」と思ってもローンを組むことができず、買う方法は現金一択しかない。もちろん、永住権を取得すればローンを組めるが、10年以上日本に在留しているなど要件を満たすことが難しいのが現状だ。このローン問題を解決する方法を模索し、貸金業を行うYAKワールドローンを設立した。相談から手続きのアドバイスまで手掛けている。また、日本の金融機関10行以上と提携するなど外国人が融資を受け、不動産を購入できるよう仕組みを構築した。

─外国人とは、具体的には。

 中国、香港、台湾、シンガポール、米国、欧州など世界各地の外国人だが、中国人や中国にルーツのある華人が顧客だ。

─その中で、どのような層が国内不動産を購入しているのか。

 日本に住む外国人で、住む家を探している割合が50%。次に海外に住む中国人による不動産投資が30%、在日中国人による不動産投資が15%、海外にいる中国人が日本で住む家を探している割合が7%の順となっている。テレビやウェブサイトなどでよく騒がれているのが、2番目に挙げた「海外に住む中国人による不動産投資」だ。当社でもこの層が増えている。

─外国人投資家はどのような物件を好む傾向にあるのか。人気のエリアなどはあるか。

 東京23区内の不動産を中心に提供しているので、都内になるが、タワーマンションあるいは1棟ビル・マンションを求める人が多く、需要は半々くらいだ。前者のタワーマンションでは勝どき、月島が特に人気で、金額の中心は1~2億円。後者の1棟マンション・ビルでは、銀座や浅草、上野、池袋など有名なエリアで人気があり、中には10億円ほどの物件を購入する人もいるが、1~5億円が中心価格帯だ。

─日本のどこに魅力があるのか。

 年齢は30代後半から50代、IT関連や不動産業などの経営者が多い。彼らに共通するのは日本が好きであること。それを前提に購入していると言っても過言ではない。
 外国人にとって、日本の不動産の魅力は大きく二つある。一つは、海外に比べ物件価格が安価なこと。円安が後押ししている上、金利が3%と手頃感がある。二つ目は、政治的混乱のリスクが少なく、治安が安定し、町がきれいなことだ。感覚的なニュアンスだが、日本は食もおいしく安心して生活でき、日本人はやさしく丁寧なことが注目される理由だと感じている。一方、中国では土地を所有できないし、欧米は金利、価格が高いので利回りが低く、みんなあまり手を出そうとしない。

─貴社は上場を目指している。目的や戦略は。

 22年12月のグループ連結売上高は18億2700万円になり、今期は8月時点で21億2900万円と右肩上がりとなった。2年後に売上30億円を目標にしている。
 しかし、ただ外国人に日本の不動産を販売するだけではなく、インバウンドのリーディングカンパニーを目指している。そのため、日本や海外で災害が発生した際には協力できるよう利益をプールしており、能登半島地震では寄付という形で支援させていただいた。上場することで、企業としての社会責任を果たしながら、日中の架け橋になり、両国に貢献していけるよう努めたい。