低学歴でもキャリアアップできる道を

「学歴非公開」「人柄の定量化」による採用サービスが登場

 採用市場において指標として重視される「学歴」。学歴と就職先、収入がリンクするという社会構図は、受験戦争の過熱化を引き起こす大きな要因となっている。一方で、学歴重視の採用だけでは仕事に必要な能力を図り切れず、入社後にミスマッチを起こして早期退職につながるケースも多いと聞く。

 そんな中、「学歴以外の部分で評価され、キャリアアップできる道を作りたい」という志をもとに、学歴非公開、「人柄」の定量化による採用ツール「HINODEドラフト」を育成型人材紹介サービスの「HINODE」(大阪市西区)が開発した。

 「人柄の定量化」については、面談後ごとに企業側が求職者に対し「コミュニケーション力」「積極性」といった項目で数値評価したデータを蓄積する仕組みだ。一方企業側は、「価値観レター」という形で理念や仕事のやりがいにフォーカスして求職者への魅力付けを行う。

「HINODEドラフト」求職者側画面。LINEで会社からオファーが届くという仕組み
「HINODEドラフト」求職者のプロフィル画面

 同サービスを運営する同社代表の淀澤伸之さんは自分自身が「低学歴」。夜間高校を中退後、建築業にいそしみ、のちに人材系の営業会社を経て現在に至る。

 淀澤さんが課題に感じているのは、低学歴人材のキャリアアップの難しさ。「自分は人のご縁でここまで来ることができましたが、中卒・高卒で就職するような方は狭いコミュニティーにとどまっていることも多い。そもそも世の中にはどんな仕事があるか知る機会のないまま今の仕事に就いているケースも多いんです。まずは選択肢を広げて、いろんな企業とつながりを作ってほしいと思ってこのサービスを開発しました」と語る。

「HINODE」代表の淀澤伸之さん

 同サービスは求職者側だけでなく企業側にもメリットがある。高学歴人材はどうしても採用力の強い大手企業に流れてしまう。採用予算・人数に限りがある中小企業においては、一人あたりのマッチングがより重要になってくる。マッチングは学歴以上に、企業文化や理念にどれほど共感できるかが肝心だ。同サービスは「理念」と「人柄」によってマッチングを図るためミスマッチを防ぎやすい仕組みとなっている。「人柄」を重視するという面では、人材不足になりがちな営業職やサービス職などの職種に特に生かせるサービスだといえる。

 淀澤さん自身の経験からスタートしたプロジェクトだが、同サービスをリリースするにあたって視野を広げるために養護施設にも足を運び、施設で暮らす子どもの進学率の低さという問題にも直面したという。

 「低学歴の人はただ『勉強が嫌い』な人というイメージがあるかもしれません。しかし例えば、スポーツや音楽など勉強以外のことを頑張っていた、という人もいますし、そもそも環境のせいで勉強ができなかった人もいます。学歴も頑張った証拠として大事な要素ですが、このサービスを通じてもう一つ、別の道も築いていけたら」と淀澤さんは語る。

 今はデモ段階で、徐々に参画企業と利用者を増やし、精度を上げていくという。同社の取り組みは、就労に課題を抱える人々に新たな一歩を踏み出させてくれるだけでなく、あらゆる業界で人材不足が叫ばれる現代において新しい光を差し込んでくれるかもしれない。

<取材協力>HINODE/大阪市西区江之子島1丁目7-3奥内阿波座駅前ビル812
https://hinode-inc.com/