〝大阪らしい〟斬新なホテルが続々 「タコ焼き天井」「寿司型の蛇口」ユーモアあふれる仕掛け

 大阪府では訪日観光客数が過去最高を記録し(2月8日号1、2面参照)、観光業が活況を呈している。ホテルが相次いで開業する中、差別化の必要性が高まっている。そこで今回は、独自のコンセプトを持つホテルを取材した。

ペットと宿泊できるプランを設けているキャノピーbyヒルトン大阪梅田
ペットと宿泊できるプランを設けているキャノピーbyヒルトン大阪梅田
タコ焼き器の形をした天井
タコ焼き器の形をした天井
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開業ラッシュの中、独自コンセプトで差別化図る

 昨年9月、大阪駅北のグラングリーン大阪北館内に開業した「キャノピーbyヒルトン大阪梅田」は、シティホテルでありながらペットと宿泊できるプランを設けている。室内には、ペット用のマットからケージ、水飲みやフードボウル、トイレまで設置している。
 さらに、ペットカートや持ち運び用フードボウルをレンタルできるほか、ウェルカムスナックやおもちゃなどを贈呈しているという。
 うめきた公園でペットを連れて散歩したり、館内1階にあるカフェのテラス席ではペット同伴で食事ができるため、ペットとともに旅を楽しむことができる。

大阪の歴史、産業発展の要素も

 デザインも実にユニークだ。エレベーターホールの天井には「タコ焼き器」をイメージした照明を採用したり、ダイニング「シーシー カーボンコピー」には黒門市場のアーケードをイメージしたりと館内にいながらも「大阪らしさ」を感じられる空間に仕上げている。
 一方、客室は水都大阪を表現した「リバーブルー」、グラングリーン大阪の緑を表す「うめきたグリーン」を基調に、天蓋(てんがい)を表すキャノピーには、豊臣秀吉の馬印「千成瓢箪(せんなりびょうたん)」や、全室にパナソニック製の第一号機をデザインした冷蔵庫を設けるなど、大阪の歴史や産業発展の要素を取り入れている。

パナソニック製一号機をデザインした冷蔵庫
パナソニック製一号機をデザインした冷蔵庫

 総支配人のスリジャン・ヴァデラ氏は「エントランスに足を踏み入れた瞬間から室内に至るまで、大阪の活気を感じられる特徴的でユニークなホテルだ。ホテルステイを楽しんでもらえるサービスや空間を提供していきたい」と話す。

宿泊そのものを楽しい体験に

 大阪メトロ中央線「朝潮橋」駅から約6分歩くと、一面ガラス張りの外観に金の巨大なゴリラの置物が鎮座した建物が見える。昨年末にオープンした一棟貸ホテル「JAPAVISTA Wonderland(ジャパビスタ ワンダーランド)」だ。

金の巨大なゴリラの置物が鎮座した「ジャパビスタ ワンダーランド」
金の巨大なゴリラの置物が鎮座した「ジャパビスタ ワンダーランド」

 もともと倉庫として使用されていた建物を改装し、「大阪らしさ」を存分に取り入れたユーモアあふれる仕掛けが特徴だ。カバやゴリラのテーブルを設置したり、洗面台には寿司の形をした蛇口を採用したりと一般的な宿には見られない室内に仕上げている。

洗面台には寿司の形をした蛇口が…
洗面台には寿司の形をした蛇口が…

 宿泊客の半分強は日本人客で、次いで中国、アメリカ、オーストラリア人が占めるという。運営会社のグローバルコムズジャパン(大阪市浪速区)岸本和也社長は「家族や友人たちと室内でも大阪を感じられる空間にし、宿泊そのものが楽しい体験になるよう工夫した」と話す。

大芸大とコラボ

 大阪芸術大学デザイン学科とコラボレーションし、資材置場として使用されていた低天井のスペースに、トリックアートを施した。「学生という若い間に作品を世の中に送りだすチャンスを提供すると同時に、民泊にアートを描くことでどのような効果があるか興味があった」(岸本社長)。

大阪芸術大学デザイン学科とコラボし、壁にトリックアートを施した部屋
大阪芸術大学デザイン学科とコラボし、壁にトリックアートを施した部屋

 こうした特色あるこれらの斬新なホテルの登場は、大阪のホテル業界に新たな風を吹き込み、観光都市としての魅力を一層高めることが期待される。今後も大阪らしさを打ち出したホテルの展開が進むのか、動向に注目したい。