アパレル不況でも高級衣料で好業績 「ラグジュアリー市場で勝負」 カツキインターナショナル

 〝物不足〟の高度成長期から〝物あまり〟の時代に移り、価格競争に疲弊するアパレル業界は「買われる理由」を作るブランディングに舵を切りつつある。こうした中、「カツキインターナショナル」(以下カツキ、大阪市中央区博労町)は富裕層を相手にした高級衣料で勝負し、業績を伸ばし続けている。

カシミアを超える高級繊維となるビキューナのストール(手前)

 「あなたから買ったお洋服はいつも友人にほめられるのよ」。カツキの製品を購入する富裕層たちがいつも口にする言葉だ。

 高級衣料といっても、カツキが取り扱う製品は決してエルメスやシャネルのようなハイブランドではなく、カシミヤなど希少性のある高級衣料が中心。取引先は主に百貨店などで、ハイブランドの肩書きがない分、高い品質の上質な製品にこだわる。百貨店外商からは「品質の割りに価格が安い」と評判だ。

 同社が最も得意なのはカシミヤ製品。ネパールなどに生息するカシミヤヤギの毛から作る織物だが、ヤギ1頭から獲れるのは年150㌘程度と希少。これを繊維の細さや毛の長さで判定し9つの等級に分けるが、カツキはその中で最高品質の製品しか扱わない。

 通常の羊毛(19〜24㍈)に比べ、カシミヤ繊維の直径は14〜16㍈。この細さがやわらかな肌ざわりとなる。加えて、高級衣料は軽さも特徴で「一度着ると他の製品が着られなくなる人が多い」(香月社長)。等級が高いとカシミヤの繊維も長いため、毛玉ができにくい特徴もある。

 さらに、カシミヤを超える製品として同社が得意なのがビキューナだ。南米アンデス山脈に生息するラクダ科の動物の毛が原料で、繊維はカシミヤより細い約12㍈。動物繊維ではアンゴラなどと並び最高クラスになる。「大きいストールになると価格は300万円を超える。滅多にお目にかかれず、百貨店外商も当社に訪れる」と香月社長。

カシミアのコートを採寸する香月社長

 同じ素材でも等級で価格が変動するケースは、なじみのダウンにも見られる。量販店で1万円程度の製品がそろう一方、世界最高峰のモンクレール社(モ社)ともなれば軽く10万円を超える。

 通常、量販店などで扱うダウンは中国産の白鳥の全身の羽毛を使うが、モ社やカツキは北欧産の白鳥のやわらかい胸の綿毛だけを使う。品質判定には上から抑えた時に反発するフィルパワーという数値が用いられ、復元力が高いほど羽毛が空気を内包しやすく、保温性も高い。フィルパワーは一般に600で十分とされるが、「モ社は800〜1000。当社で扱う製品も同じで、軽くて暖かく、肌ざわりが良い」と香月社長。

 同社はレザーやムートンも同じ視点で一級品だけを扱っているが、それを支えるのが海外ブランドの専門知識に明るく、交渉力に長けたスタッフたちだ。全員が業界経験30年以上のベテランである。

 コロナ禍でアパレル業界が不況に喘ぐ中、独自路線で発展を続ける同社。「他社にない一流品を扱うことで差別化を図っている。現代の商売は尖らせることが大事」と話している。

 同社が扱う製品はホームページやインスタグラムでも確認できる。

 >>ホームページ

 >>インスタグラム