上方落語・噺家成人式 入門15年目の若手5人がトリ務める

江戸落語「真打制度」に匹敵する新たな資格制度を目指す上方落語協会は「上方落語・噺家成人式」と題して、今年入門15年目となる5人の若手に大阪・天満天神繁昌亭と神戸・新開地喜楽館で1週間ずつトリを取らせる新たな試みを発表した。

寝坊して遅刻し皆が失笑の中で、わびる林家愛染

初の成人式に参加するのは2009年入門の桂米団治門下・団治郎(35)、桂文福門下・和歌ぽん(32)、林家染丸門下・愛染(36)、桂福団治門下・福点(56)、桂文枝門下・三語(38)。

上方落語界では戦前には「前座・中座・真打」と、江戸落語界と同様の制度があったが、戦後の復興期に廃止。以降はたびたび「上方にも江戸落語のような目安が必要」との論議が起こっては消え、今日に至っている。一足跳びの復活に依然慎重論が強いことから、笑福亭仁智会長は「江戸落語の場合、入門15年ぐらいから真打昇格者が出て、改名による名跡襲名披露興行などで華やか。上方の寄席でトリは入門25年ぐらいが目安になっており江戸に比べかなり遅い。上方でも〝成人式〟は仮名で、新たな名称を公募して制度として定着して行きたい」と説明。

仮称・成人式の発足経緯を話す仁智会長

1週間のトリは最後に自身が高座へ上がるだけでなく、演者と演目の選定や観客動員まで責任を持つ立場。加えて途中での口上の際に用いる後ろ幕新調や寄席入り口に掲げるのぼり新調などにも費用が掛かり、ごひいきと呼ばれるスポンサー獲得も欠かせないとあって、落語の実力だけでなく人気のバロメータ-ともなる。

第1弾の8月に登場する愛染は、記者会見に寝過ごして遅刻。「もう遅刻しません! 真打という字は〝まだ〟とも読めます。〝お前なんぞ、まだまだや!〟と言われぬよう精進いたしします」と平身低頭。9月の団治郎は「僕らがコケると後の者が続かなくなる。頑張らないと」と緊張気味。11月の三語は「ぜひ新しいお客さんを繁昌亭に呼べるように」と意欲。12月の和歌ぽんは「大相撲は3日で逃げ出したけど、落語は15年続いた。文福一門の明るさと元気を前面に出していきたい」と構想。盲目の噺家として知られる来年1月担当の福点は「自分にこうした役割が巡ってくるとは思ってもみなかった。感謝しかない」と感無量の面持ち。

「やるぞ」と意気込む左から、福点、和歌ぽん、三語、団治郎、愛染

仁智会長は「何ごとも経験が大事。経験も蓄積できるので」と積極的。制度化に慎重だった米団治副会長も「私も15年目で当時のサンケイホールで独演会を行い自信になった。何ごとも経験することが大切」と賛成に転じた。

協会では、この制度を来年以降も続けるために、既に15年に達している入門16年以上の協会員については、個々の希望を聞きながら常設寄せでトリを取る機会を設けるなど工夫することにしている。

 (畑山博史)