【わかるニュース】最大リスクは「もしトラ(もしかしたらトランプ?)」か 国際協調消え、専制独裁争い

アメリカ大統領選挙の街並み
アメリカ大統領選挙の街並み

 新年早々に震災・津波に航空機衝突・炎上と、大きな災害・事件で幕を明けた2024年。自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる事件は逮捕者を出し拡大の様相がくすぶる。
 そんな中で、調査機関がそろって予想する今年最大のリスクは「トランプ米大統領再登場」だ。なぜなのか?間もなく3年目に入るロシアのウクライナ侵攻、年を越したイスラエルのパレスチナ・ガザ地区侵攻の2つの戦争の行方を縦糸に、今週末13日の台湾総統選、3月にはロシア大統領選、4月は韓国・インド総選挙、6月にはEU(欧州連合)議会議員選、9月は自民党総裁選、11月には米大統領選と、世界中で重大選挙が横糸のように相次ぐ。決して明るいとは言えずに始まった今年の行方を大胆に読み解く。

鍵握る「エネルギーと食糧」の行方台頭する第三極は不安定

「世界経済圏」雨散霧消

 PwC Japanグループが発表した「24年地政学リスク展望」によると最大の項目を『パワーバランスの多極化』と定義①米国大統領選②台湾情勢③ポスト・ウクライナ戦争④グローバルサウスの第三極化、を挙げている。

 歴史は20世紀に2度の世界大戦後米ソ冷戦入り、世紀末のソ連崩壊で米一極体制に。今世紀、次第に米が力を失い中露が台頭。トランプ大統領の登場で、米は世界リーダーを実質放棄、南半球新興国成長も相まって勢力図は複雑に入り組む。欧米を中心とした「グローバル・チェーン」中国主導の「一帯一路」は各地で目詰まりを起こし、各国てんでバラバラに生き残りへと走り出した。「民族・宗教・国家」の妥協点なき対立は憎悪連鎖を呼び、国連は安保理常任国・露中米の拒否権合戦で機能マヒし当事者能力を喪失した。

大統領支持者の集会
大統領支持者の集会

「トランプ」の増殖連鎖

 約50年前に起こった「ニクソンショック」。ドルの固定レートを放棄し一気に円高に振れた事が今も記憶されるが、それだけではない。電撃訪中による国交正常化と在台米軍撤退と、後の南ベトナム放棄。米国が同盟国との安保条約を破るケースはこの時から始まっている。トランプ再登場はこれ以上の危機だ。

 トランプの大統領1期目スローガンは「アメリカ第一」主義。実態は「自分が得か損か」だけ。彼には、積み重ねた外交努力や友好国との約束事を守るという信義的常識がない。1期の外交結果は、温暖化防止のパリ協定離脱に始まり、中東ではアフガン撤退を決め、大使館エルサレム移転などイスラエル一辺倒。露・北朝鮮に過剰とも思える接近を許し、中国だけでなくEU(欧州連合)や日韓などの友好諸国にも「貿易収支不均衡な国には高関税。駐留米軍への不要負担を積み増せ」と脅し続けた。結果はどうか?アフガン政権は崩壊しイスラム原理主義国家に逆戻り、露・北朝鮮、イスラエルの増長を招き2つの戦争が起こった。バイデン政権はその後始末に追われ続けている。

 仮にトランプ再登場なら、パリ協定再離脱どころではないショックが世界を襲う。1期目は素人政治家のトランプを利用しようと有象無象の連中が面従腹背で入り込んだが、今度は違う。既にトランプは「憲法の一部を停止し、権力を大統領に集中。議会の造反を許さない」と表明している。専制国・中露ではなく民主国家・米国での話しだから恐ろしい。1期4年しか大統領ができないトランプは、副大統領選びも含め「絶対服従」の者だけを集める。その人たちの中から〝次の大統領候補〟としての後継者が選ばれる。〝トランピズム〟(トランプ的考え方、すなわち利己的なアメリカ第一主義)は、米国を真二つにする勢いで定着。仮にトランプが退場しても、自由な民主主義を守る〝世界の警察〟と称せられた米国の存在は過去の物だ。

 今後トランプが手を付ける事柄を簡単にまとめよう。まずFRB(米連邦準備理事会)と米国輸出入銀行の停止または廃止。大統領が自由に金利を決め、他国と協調した輸出入は一気に停滞する。1㌣の得にもならないウクライナ支援は即打ち切り。NATO(北大西洋条約機構)や日韓などとの安保条約に対しても「破棄」をチラかせながら、さらなる負担増大を迫る。

 伝統的に市場主導で、他国から優秀な人材を積極的に受け入れ、競争から技術革新を生み出して成長してきた米国。トランプが大統領になってもならなくてもどんどん内向きへと落ち込み、同盟国は「付き従うか? 自立するか?」の究極選択を迫られる。

大統領支持者の集会
大統領支持者の集会

エネルギー確保が分岐点

 アジアの行方を占うのは中東の動向。米国は既に中東への興味を失った。なぜか? 自前で原油や天然ガスの発見開発が進み、中東原油を必要としなくなったから。中東諸国は、米に代わるパートナーとして中露やインド・トルコとの関係強化を図り新たな安定を模索する。

 自国でエネルギーと食料をまかなえるロシアは悠然と構えているが、中国や日本など中東原油に頼る国々はウの目タカの目で連携を図る。新興国のリーダー格・インドも未だに石炭発電に大きく依存、電力不足は経済発展の足を引っ張る。今後の世界は、原油・天然ガスそして穀物などの食料を「どこから調達するか?」という分布図が伸長の大きな判断材料になる。

独立広場に掲げられたウクライナ国旗
独立広場に掲げられたウクライナ国旗

 北アフリカ諸国は、ほぼ手つかずの原油・天然ガス資源を持っている。地政学的には欧州との結び付きの中で、アフリカ全体の人口増も相まって着実な成長を遂げ、今世紀半ばには欧米VS中露に割って入る「グローバルサウス」(偉大な南半球、新たな第三勢力を指す)のリーダーとして台頭する。

 欧州は積極的な温暖化阻止取り組みを見れば分かるように、理想を掲げた権利主義国の集合体。しかしコロナ禍とウクライナ侵攻で見直しをやむなくされた。ロシア産天然バス供給が打ち切られるとたちまち国民の生活が苦しくなったドイツがその典型だ。ロシアが西側の支援疲れに乗じ、ウクライナ東部を力ずくで併合して停戦に持ち込めば、次は近隣の旧ソ連領の国々、さらに東欧諸国がターゲットに。ロシア共和国のソビエト連邦への回帰指向は国民悲願であり、もはや誰も止められない。同じ事は中国における台湾問題でも言える。〝アメリカという歯止め〟が弱まると、世界は弱肉強食時代へ逆戻りする。そして〝強いリーダー〟を称する専制的ミニ・トランプ型の独裁政権が次々出現。「2024年はその始まりだった」と後世に語り継がれる。

パレスチナ自治区
パレスチナ自治区

縮み続ける日本社会

 最後に日本はどうか?高度成長時代「一億総中流」と言われた豊かな生活は、今や自己責任の「格差社会」が当たり前になった。全ての原因は少子高齢化。人口減の国に経済発展はない。残ったパイを食い合う時に、企業は既得権益を必死で守ろうとする。そのために便利な政治家は二世、三世議員が好都合。「家業が政治家」には庶民の痛みや苦しみは分からず、敷かれたレールを走るだけ。優秀な頭脳が集まっていた官僚組織も若年層を中心に離脱が相次いでいる。「こんな政治家に遣われるのはもうゴメン」との思いからだ。

 日本の芸能界は「JKT」(ジャニーズ・歌舞伎・宝塚歌劇団)と言われ、かつての権威や慣習が音を立てて崩れつつある。若い世代はもう既得権継続を許してはくれない。政治での老害を排し、若者にもっと関心を持ってもらわないと、内憂外患の将来日本はお先真っ暗だ。