ひたむきに中身100%で勝負

「美しくなる」という結果にこだわる化粧品

 谷町筋沿いに自社ビルを構える「フェース」は、化粧品の開発・販売やエステサロンの運営から他社エステサロンの経営サポートまで、女性の美についてトータルサポートを行う会社だ。

 設立は1987年。その当時は肌への負担よりも製品の品質保持が優先され、中には人体に影響を及ぼす可能性のある成分が入っているものも出回っていた。成分表示制度がなかったのもあり、製品に何が含まれているか消費者側も意識する機会があまりなかった。そんな中、化粧品によって女子顔面黒皮症に罹患(りかん)したと被害者が化粧品会社7社を訴える化粧品公害裁判(大阪化粧品被害賠償請求訴訟)が起こる。一連の騒動に衝撃を受けた創業者が、「女性が本当に美しくなれる化粧品を作らねば」という思いから同社を立ち上げた。

 設立の背景から、同社の製品は「肌に不要な成分を入れず、必要な成分を必要なところへ届ける」ことにとにかくこだわっている。製品にはほとんど香りがなく、パッケージのデザインがシンプルなところからもその徹底ぶりがわかる。
 「不要なものを入れない」という観点でまず同社が取り組んだのは、合成界面活性剤を使用しない化粧品作り。クリーム状の化粧品は水分と油分が両方含まれており、双方が分離しないように合成界面活性剤が含まれていることがほとんど。そのため同社は1988年に日本で先駆けて「ゲル化粧品」を販売し、現在も製品の中心はゲル状の製品。「ゲル」は合成界面活性剤を使用する事なく(※1)有用成分を保持できるという性質を持っている。
 他にも、パラベン・フェノキシエタノール・エタノール(※2)・鉱物油・色素・香料を配合しないなど、無添加で安全性の高い製品作りを行っている(一部のメイク品は除く)。
 さらに、老化を進める原因となる活性酸素を生む成分を排除するよう「KSA(カット・ソッド・アッセイ)(※3)」も行っている。同社の製品は全て、KSAを実施し活性酸素の発生が検出できなかった成分のみを使用している。
 「今となってはゲル化粧品は当然のように市場に出回っていますが、当時は非常識すぎてあまり見向きされなかったと聞きます」と話すのは広報担当の中井珠江さん。

 また「必要な成分を必要なところへ届ける」ために、リポソーム(※4)を活用した「ラメラ美容法」を独自に確立。同社の製品の中核となるラメラ美容法は、紫外線や摩擦によって崩れがちな角層の「ラメラ構造(※5)」を元の配列に整えることで、肌そのものが本来持つ保湿・保護機能を取り戻すというもの。
 さらに、先ほどのリポソームに、一般に普及しているゼラチンコラーゲンよりも保水力の高い「生コラーゲン」を巻きつけることで、表皮でなく角層の中に生コラーゲンを行き渡らせることのできる「フェース生コラーゲン」を開発。フェース生コラーゲンは化粧品では珍しい製法特許を日本にとどまらず世界各国で取得し評価されている。 

 一般の小売流通だと価格競争の波に影響されてしまうというデメリットと、プロによる肌のカウンセリングに基づいて化粧品を進めてほしいという思いから、同社の製品は長らくエステサロンを通じての販売が中心だった。しかし、「より多くの方に、手軽にエステ品質の化粧品を実感してほしい」と、ドラッグストア向けシリーズとして「WITHOUT」を2021年にリニューアルし、発売をスタート。
 先述の7つの成分無添加やKSAを満たし、化粧水と保湿ジェルクリームには「フェースゼラチンコラーゲン」、美容液「プレケアエッセンス C」には「フェース生コラーゲン」を採用。「ビタミンC配糖体」も配合されている。肌のカサつきやキメの乱れなどに角層ケアでアプローチし、ラメラ美容法を自宅でも体感できる製品となっている。現在はコクミンドラッグ等で販売しており、ウィズアウトオンラインショップで直接購入も可能だ。

 業界の固定観念を覆すような製品を世に出してきた同社だが、その道のりは地道な「モノづくり」によるもの。製品の新発売やリニューアルもめったにせず、流行になるような華やかさはない。その分、「美しくなるよう結果を出す」ことに集中しつづけてきた。
 社名の「フェース」は、「Face(顔)」でなく「Faith(誠実)」。さらに昔の英英辞典では、「たとえ不可能、見込みがない、賢明でないと思っても信じる」「誰かあるいは何かを信頼もしくは信用することを全うする」という意味の動詞だったという。社名のとおり、強い信念と技術力でこれからも結果にまっすぐコミットした製品作りを行う。

(※1)親水基・親油基とも石油起源の化合物からなる合成界面活性剤。
(※2)エキス抽出用エタノールを除く。
(※3)化粧品の成分が発生させる活性酸素を直接検出する、同社独自の試験法。同志社大学名誉教授の西岡一氏(1934-2014)により開発された試験方法で、現在は京都大学大学院生命科学研究科附属放射線生物研究センター・松本智裕氏に受け継がれている。
(※4)細胞を構成する有機物のうち,細胞膜や生体膜の構成成分であるリン脂質を使って水中で作ることのできるカプセル。
(※5)肌の角質層にある水分と油分が交互に重なり合い、ミルフィーユ状になっている構造のこと。

■取材協力:株式会社フェース/大阪市中央区谷町2-7-8 FAITHビル