2025年国際博覧会(大阪・関西万博)は8月9日、放送作家・小山薫堂氏がプロデューサーを務めるテーマ館の設計・建設工事の落札者が決まったと発表した。落札価格は6つで80億円と予定より16億円増えたが、万博協会は目玉となる八つのテーマ館全てで建設事業者が決まった。参加国が自前で建設する海外のパビリオンの遅れが深刻になっているが、運営する万博協会ではひとまず安堵した格好だ。
8つのテーマ館は映画監督の河瀬直美さん、メディアアーティストの落合陽一さんなど各界で活躍する8人のプロデューサーが手掛けるパビリオン。8つのうち、協賛企業が建物を提供する2館を除く6館は、運営主体の日本国際博覧会協会(万博協会)が入札を実施した。合計落札額は、資材価格の高騰などで当初の予定価格より2割超(約16億円)も増加。増えた分はそれぞれのプロデューサー自身が、協賛金を募るなどして集める。
建築許可申請2カ国のみ
深刻なのは海外パビリオンの遅れだ。
参加国が独自に建設する「タイプA」と呼ばれるパビリオンは、米国やドイツなど56カ国・地域が出展するが、建設業者が決まっているのは6カ国(8月7日現在)にとどまっている。工事に必要な大阪市への建築許可の申請は韓国とチェコの2カ国のみ。
ただ、万博協会が建物を建設し、約100カ国・地域が出展する「タイプB」や「タイプC」については、「いずれも開幕までに完成できる見通し」という。
資材高騰や人手不足が背景
大阪・関西万博の開幕について吉村洋文知事は全国知事会議で「絶対遅らせないという思いで一致団結して進めていく」と述べ、海外パビリオンの建設について府・市は「中小の建設・設備業者の協力が必要だ」として、関西の業者が加盟する日本建設業連合会(日建連)関西支部や大阪府中小建設業協会など7団体に協力を求めている。ただ、ゼネコン業界からは「予算と費用の乖離(かいり)がある」「工期が厳しい」「各パビリオンの入札・設計情報が不足している」などの不満の声が上がっている。さらに、時間外労働に上限規制を適用する「2024年問題」も迫り人手不足への危機感は強く、依然受注には積極的とはいえない状況だ。
このため、西村康稔経産相は万博の事務局会議で「抜本的な体制強化を行い、建設への支援を経産省の総力をあげて取り組みたい」と表明。
これを受けて経済産業省は海外パビリオンの工事を受注した国内の建設業者が対象の万博貿易保険を創設。加入すれば、発注側の参加国・地域から代金が支払われない場合に、代金の9割以上が補償される。保険は政府が全額出資する「日本貿易保険(NEXI)」が運用する。
政府や万博協会は後押しを急いでいる。