世界の若者10億人に危機 日常のイヤホンが聴力を奪う

 長時間のイヤホン使用による「イヤホン難聴」への警戒が強まっている。WHOは世界の若者10億人以上がリスクを抱えると警告。失われた聴力は戻らない。その実態と予防策に迫る。(竹居真樹)

イヤホンを使用する子どものイメージ

イヤホン難聴に注意 失った聴力戻らない恐れ

 通学や通勤中にスマートフォンでゲームをしたり動画を視聴したりするため、日常的にイヤホンやヘッドホンを使う人が増える中、大音量を長時間聴き続けることで起こる「イヤホン難聴」への警戒が強まっている。世界保健機関(WHO)は、イヤホンの使用などにより世界で10億人以上の若者が難聴のリスクにさらされていると警告。厚生労働省も中高生約3万人を対象に聴力検査などを行い、国内の実態把握を進めている。

 イヤホン難聴は、音を感じ取る内耳の「有毛細胞」が大きな音によって徐々に傷つくことで起こる。イヤホンそのものが原因というより、問題となるのは「大音量」と「長時間」の組み合わせだ。一度壊れた有毛細胞は元に戻らず、永久的な聴力低下につながる恐れがある。特に電車内や屋外など周囲が騒がしい場所では、音楽や動画を聴き取ろうと無意識に音量を上げやすい。10代からこうした習慣を続けることで、30~40代で難聴が表面化する可能性も指摘されている。
 難しいのは、症状がゆっくり進むため本人が気づきにくい点だ。初期には高い音から聞こえにくくなり、日常会話には大きな支障が出ないケースもある。耳鳴りや耳が詰まったような「耳閉感」が現れることもある。
 大阪市北区の「ほその耳鼻咽喉科」の細野研二院長によると、実際には症状がなくても「イヤホン難聴について知り、心配になった」と受診する人が多いという。症状がある場合は「耳鳴り」「耳閉感」のほか、「イヤホンを着けると耳がかゆい」と訴えるケースも目立つ。
 「かゆみは耳の入り口から鼓膜までの〝外耳道〟にイヤホンが接触し、炎症を起こしていることが多い」と説明する細野院長。患者にイヤホンの使い方を指導する際、長時間使用による将来の難聴リスクについても説明しているという。
 「耳鳴りや耳閉感で受診する患者も、聴力検査ではまだ難聴が確認されないケースが大半だが、イヤホンの装用時間が長い人には注意を促している」と話す。
 予防には、耳に入る音の大きさと使用時間を意識することが重要だ。「目安として音量は端末の最大音量の60%程度に抑え、1時間ごとに10分程度の休憩を取る。騒音の多い場所ではノイズキャンセリング機能を活用すれば、必要以上に音量を上げるのを防ぎやすい」と細野院長。同院でも静かな場所で周囲の会話が聞こえる程度の音量を勧めているという。

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