【記者の投資勉強会】
相場格言に「遠くの戦争は買い」とあるが、今回は当てはまらない。2月28日以降のイラン攻撃を受け、3月上旬(2日~9日)にかけて原油先物価格は一時、最大で約73%上昇した。一方で、米国の代表的な株価指数S&P500は約4%弱下落、日経平均株価は約12%の下げとなった。特にエネルギー資源を輸入に頼る日本は影響を受けやすく、下げ幅の大きさが際立った。
相場格言が当てはまらない理由は、イラン戦争そのものではなく、エネルギー供給への不安だ。イランは世界経済に打撃を与え得ることを認識した上で、原油輸送の要所であるホルムズ海峡の封鎖や、湾岸の近隣諸国への攻撃に踏み切っている。
エネルギー価格の上昇は、連鎖反応を引き起こす。原油や天然ガスの不足は、石油製品の原料であるナフサ(プラスチックなどの原料)や肥料の供給制約につながる。結果として農業や自動車、電子部品など幅広い産業に波及し、世界経済全体の重荷となる構図だ。つまり、終結時期が見通せない現状は、株価がもっとも警戒する〝不確実性の高まり〟そのものといえる。
こうした中、3月17~19日は日米欧の金融政策決定会合が集中した「中央銀行ウイーク」だった。いずれも政策金利は据え置きとなり大きなサプライズはなかったが、中東情勢の不透明さへの言及が目立った。米国はトランプ大統領が利下げを求める一方、市場では利下げ回数の減少や開始時期の後ずれに加え、利上げの可能性も一部で意識されている。欧州でもエネルギーコスト上昇への懸念から、物価上昇率が2%目標を上回る展開が想定され、追加利上げ観測も出ている(6月との見方も)。為替市場では有事のドル買いが進み、円安が加速している。
過去の「オイルショック」を振り返ると、1973年10月からの第一次では日経平均は約28%、S&P500は約46%下落した。一方、1979年1月の第二次では日米の株式市場は暴落には至らなかった。背景には、第一次の経験を踏まえた省エネルギーへの転換が進んでいたことに加え、各国の中央銀行がインフレ抑制に向けて迅速に金融引き締めを行ったためといわれている。
株価下落の大きさと頻度に関する経験則もある。S&P500は年に3%程度の調整が平均7回、5%の下落が3回、さらに10%超の調整が15カ月に1回、3年に一度は20%超の急落が起こるとされる。
現在、日米とも最高値からの下落幅は、S&P500がマイナス6・35%、日経平均がマイナス10・35%(3月20日現在)。10%前後の下落は珍しい局面とは言えないが、相場の〝底〟を探る上での一つの目安となりそうだ。
イラン戦争の行方を予測するのは不可能だ。しかし、短期的な値動きに振り回されず、長期の視点で資産形成を考える姿勢が一段と重要な局面にある。
