
知らずに暮らしているなんてもったいない! あなたの街の、あんなイイ店、こんなイイ店。「入りづらい」「高そう」「怖そう」? 大丈夫! グルメライター猫田しげるが、扉を開ける一歩をお手伝いします。

すでにお気づきかもしれないが、私は「どこか変わった店」が好きである。この『草原ママの肉まん』なんて、もう私の大好物としか言いようがない。味はもちろん、店主も、店構えも、何から何まで愛しています!と声を大にして言いたい。
店は千林商店街から「ぷうぷう」の道を曲がってすぐの場所。サーモンピンクの屋根にカラフルな紐飾り、ふわふわの白い雲のような綿毛が揺れる怪しげな外観。ボードに書かれているのは「モンゴルラム肉まん」「しいたけ豚まん」「チャーシュウまん」……へ〜美味しそうだなと思いつつ見ていくと「ホタテ味噌豚まん」「えりんぎ合鴨パストラミ肉まん」「大粒ニンニク塩こしょうオクラえりんぎ牛肉まん」「コーラ人参鶏肉まん」……。何の話?と聞きたくなるが、これ全部〝肉まん〟の品書き。ここは、8年前に来日した井上優奈さんが2024年の元旦にオープンしたモンゴル肉まん専門店なのだ。


いったい何種あるんですかと尋ねると「200種類ですねー。毎日新作を考えています」と井上さん。お客さんからの要望や新食材との出会いにより毎日10種ほど増え続けるという。目玉はもちろん、モンゴルではポピュラーな羊肉を使ったラム肉まん。「実家が自然豊かな大草原の中にあり、代々、羊を育てて販売していました。一家4人で一年に7頭は羊を食べていたんですよ」と言うが、それが多いか少ないのかはよく分からない。


とにかく看板メニューのラム肉まんは、井上さんの母のレシピに基づいた秘伝の味で、強力粉とラード、イースト、上白糖などシンプルな材料で生地から作り、野菜なども国産のものを使って毎日店で一つ一つ蒸し上げる。羊肉や他の肉は「コストコで買っています!」と言うから「えっ」と思ったが、「卸業者や市場で仕入れることも考えましたが、クオリティも価格も安定していることが大事。それでなきゃお客さんにこの価格で提供できないです」との言葉に、なるほどと頷いた。確かに肉まんは200円台が中心で、ボリュームもかなりある。コストコって神だな。
そうそう、肝心の味。どの肉まんも手で割ると「じゅっわぁ〜」と音が出そうな勢いで肉汁が溢れ、どばっと具が入っている。ラム肉まんは「調味料は塩と砂糖だけ」とは信じられないほど、滋味深いラムの旨みとタマネギやネギの甘みが具に行き渡り、ゴロゴロ入ったラムの肉々しさと野菜の食感が良い塩梅。「ホタテ味噌豚まん」は、「日本の味噌汁をイメージしました」とのこと、ベースは味噌で、そこに豆腐、春雨、ホタテ、豚肉、タケノコなどが加わり、味噌味の春巻の具が詰まった肉まんといった味。
ユニークなのが「ピリ辛どて焼きまん」。こちらは井上さんが和食居酒屋でアルバイトしていた経験があり、その店の名物・どて焼きとコラボしたのだという。どて焼きには欠かせない一味唐辛子を加え、完全に酒のアテのようだが、これもちゃんと肉まんとして成立しているから驚く。
他にも「フィッシュボールポテトミックス豆ドライエビ鶏肉まん」「ロティサリーチキンまん」など、もはやモンゴルからかけ離れた肉まんばかりだが、どれも決してふざけているわけではなく、いわば「肉まんの皮に料理を詰めた食べ物」という新たなジャンルと呼べる一品だ。
日替わりの10種ほどは出来たてアツアツを販売するが、それ以外は冷凍での持ち帰りや発送のみ。「一度食べた人はまた電話やSNSで注文してくれます。無添加で手作りなので大量生産はできませんが……」とのこと。ニコニコしてとっても優しい井上さん、「雨の日は15%オフとか、ちょっと型崩れは1個サービスとか、毎日何かの割引をしています」。確かに、この店で〝定価〟で買った記憶がない。「まずはこの味を知ってもらうことが大事なので、今は赤字でも仕方ないです」。……ちょっと心配になるが、読者の皆さんが全員購入してくだされば黒字化できると思う。それよりも気掛かりなのは、こうしているうちにもどんどん肉まんの種類が増え、300種に到達しているかもしれないということだが。




■草原ママの肉まん/大阪市旭区千林1-1-3/電話06(7173)3317
午前10時半〜午後8時(木曜は午後3時〜)/https://www.instagram.com/sougennmama/
