上方落語協会が「翔ぶトリウィーク」を前に成功祈願祭を開催

  上方落語協会が昨年から入門15周年の協会員噺家にホームグラウンド天満天神繁昌亭と神戸・新開地喜楽館の昼席でのトリ(出演者で最後の出番)を任せる試み「翔ぶトリウィーク」が9月中旬の繁昌亭から始まるのを前に、成功祈願祭がお隣の大阪天満宮で行われ笑福亭仁智会長らと共に出演者4人が神妙な面持ちで玉串を奉じた。

大阪天満宮神前の成功祈願祭でかしわ手を打つ左から、あおば、鞠輔、天使、紋四郎、仁智会長、正喬

 今年の4人は2010年入門組で、月亭文都の弟子・天使(51)、桂米輔の弟子・鞠輔(39)、桂春蝶の弟子・紋四郎(37)、桂ざこばの弟子・あおば(37)の4人。彼らによると「入門時同期は10人いたが途中で減っていった」と少数精鋭の状況。天使は龍谷大卒業後出版社勤務を経て繁昌亭スタッフの傍ら落語台本を手掛けるなどしてからの転身。鞠輔はアマチュア落語家向け「繁昌亭入門講座」生徒からプロに転じたが、主婦で育児の傍らパートもしながらと大忙し。紋四郎は阪大大学院工学研究科を中退した理系人間でコロナ禍で繁昌亭がネット生配信に踏み切った際には得意の電子知識を生かしサポートした。あおばは関西国際大で犯罪心理学を学び、入門時の米朝事務所からこのほど吉本興業に移籍。ピン芸を競う「R―1グランプリ」にも出場し続けており、イケメン落語家として女性誌にも特集されるほど。

入門15年目でトリを取る左から、天使、あおば、鞠輔、紋四郎

 江戸落語では「真打ち」昇進が披露され地位が明確なのに対し、上方では「前座」「二つ目」などの区分け自体が存在せず線引きが困難な状況。昨年から「定席でトリを取らせ、実質的な真打ちとして認める」という意味合いから15年生にスポットを当てる昼席運営が始まった。

 昨年は急な発表だったが該当する5人が同様にトリを務めた。今年は準備万全とあって仁智会長は「9月22日から4週連続でこの4人にトリを取ってもらい充実の17、18年目に向け勢いを付けてもらう」と期待のコメント。

「翔ぶトリウィーク」の趣旨を説明する仁智会長(右)と正喬

 抱負について天使は「私の人生は好きな事だけ、やりたいことだけやってきた。去年のお兄さん方のトリウィークを見ながら〝どうしたら盛り上がるか?〟とずっと考えていた」と自信の笑み。鞠輔は「豊中で土器発掘のパートをやってまして、調査報告会では土器発掘落語をやりました。古典は自分が好きなネタ、新作は自分の個性が発揮できるネタを」と張り切る。紋四郎は「トリで面白い事をしたい、こうしたウィークだけでなく本当にトリが取れる噺家になるためにまずネタを増やすこと。今回は2館で計14回トリを取るので取りあえず、10幾つしか無かったネタをかなり増やしました。どんどん背伸びしていきたい」と気合いを入れた。あおばは「昨夏に亡くなった(ざこば)師匠に一歩でも近づいて、師匠のような落語をやりたい。なんばグランド花月に出して頂く機会も増えた。昨年このウィークを見ていると客席はお祝いムードが強かったので僕も明るく楽しくやりたい」と決意。

繁昌亭舞台上で記者会見するトリの4人

 トリについて司会の笑福亭正喬は「その日の出演者全体を目配りし、前で出演する者の演目も見て最後に高座に上がるから中日(なかび)までは気疲れすると思う。最初の3日間が過ぎれば段々慣れてくるよ」とエールを送った。

(畑山 博史)