「息長く活動できる」とされる男性演歌・歌謡曲の世界だが、さすがに80歳を過ぎて日常的にステージに立ち続ける歌手はごくわずか。東京では小林旭(87)と舟木一夫(80)が双璧だろうが、ずっと故郷・大阪に拠点を置き活動を続ける三門忠司(80)が8月に新曲CD「いいじゃないか」を出した。プロデビューは35歳と遅咲きだが活動45年で出したレコード・CDは今回でシングル39枚目。他にデュエット曲3作があるからほぼ毎年新譜を出し続けている事になる。丈夫で長持ちの秘けつを聞いた。

開口一番。「まずキチンと原曲のキーで歌えること。歳を取ってキーを下げて歌う方もいるが、高音部の声に僕らしさがあるのでそれが出なくなったら三門忠司じゃないから」とキッパリ。そのためのボイストレーニングには毎日タップリ時間を掛ける。「声帯も筋肉だから歳と共に衰える。日々しっかりノドを鍛えて声を出して歌わないとダメ」と話し、余暇は菜園作りに汗を流しながら気付くとまた持ち歌を口ずさむ日々だ。

7年前に肺がんが見つかり2回の手術を経て全快。大阪府内郊外に転居した。「肺は声量の源だから一部切除は悩みました。医師の先生の〝また歌えるようになりますから〟との言葉を信じてリハビリ頑張りました」と表情は晴れやか。

新曲はこれまでの夫婦愛や酒、大阪などをテーマに歌ってきた実績からは珍しい手拍子で酒席でも盛り上がりそうなノリの良さから昭和の匂いが漂う。「僕から制作ディレクターに〝楽しく元気が出て、聴く人が覚えやすい曲にしよう〟と相談して実現。ヒットメーカーの麻こよみ先生が4行詞で作って頂きいい感じに仕上がりました」と説明。カップリングは前作が村田英雄、三波春夫のカバーだったが、今回は田端義夫の「ふるさとの燈台」を選んだ。「僕が昭和の時代に会社勤めで疲れた時に歌っていた当時の大スターの方ばかり。令和になって知る人も少なくなってきたので〝こんないい歌があるんだよ〟ともう一度皆の耳に届けたい」と心に秘めている。
演歌・歌謡曲の世界では何周年という区切りを重んじるが三門はほとんど気にしない。「元気で傘寿80歳を迎え、先の事は余り考えない。1年1年自分の声が出る限りは好きな歌を歌い続けます。応援して下さる方々に支えて頂いてこそ出来る仕事ですから。出演したステージで同年配のファンと再会できると僕まで元気になれるんです」と笑顔で明かした。
(畑山博史)