台湾を応援したくなる「TECH WORLDパビリオン」 半導体大国の見どころも

 シルバーカラーに塗られた山脈の様な形のTECH WORLDパビリオンは、台湾の人や自然、テクノロジーを余すところなく体感することができるパビリオン。 

 同館に展示されているのは台湾の最新テクノロジー。政治的な理由で「台湾パビリオン」として国家が出展できないため、台湾貿易センターが設立した民間企業の玉山デジタルテックとして出展する形をとっている。平等や世界中が仲良くやっていこう、という万博なのにこういう事情があるのはどうなのか。

 社名の「玉山(たまやま)」は、台湾最高峰「玉山(ぎょくさん)」のことで、「TECH WORLD」の頭文字は、台湾の国名コード「TW」。

 TECH WORLDのコンセプトは共に良くなるという意味の「共友」で、館内は「生命」「自然」「未来」をテーマにした3つの空間に別れている。来場者は入り口で受け取るリストバンド型のデバイスを付け、それで鑑賞中の心拍数などを計測しながら展示を巡っていき、最後に、どのテーマで一番心拍数が上がったかを確認するという流れだ。 

 最初のライフ劇場では、空間の真ん中に巨大な円柱型のスクリーンがそびえ立ち、その周りには560台ものASUS製のタブレット端末が設置されて圧巻。 

 映像に登場するのは台湾固有種の動物や昆虫、植物などで、音や場面にシンクロしてタブレット自体が上下左右に動き、ディスプレイされている映像もどんどん変わっていき、生命の営みを表現している。  

 映像が終わって、鑑賞した場所の反対側へ移動して、そこにあるタブレット端末に表示される蝶をスワイプすれば、円柱スクリーンの中を自分が放った蝶が飛んでいく。

 今まで映像を見ていた円柱型のスクリーンの中にはエレベーターがあり、それに乗って一気に4階へ移動すると、そこは壁が360度スクリーンになっている空間で、ネイチャー劇場と呼ばれる場所。ここでは、高精細な4K映像を壁に投影し、山が多い台湾を代表する玉山を中心に雄大な自然を映像で見せてくれる。 

 映像が終わると、2階まで歩いて緩やかなスロープを下っていくが、途中で、世界生産量の3分の1を生産する胡蝶蘭や、AIを使って描かれたデジタルアートなどが鑑賞できる。

 たくさんの胡蝶蘭が並ぶ「蘭の道」では、色とりどりの胡蝶蘭があるだけでなく、マイクロLED技術を使って、3Dで描かれた蝶が花の間を飛び交っている様子を見られる。 一部の胡蝶蘭の花びらには文字も印刷されている。

 蘭の道を過ぎると宇宙をイメージさせる様なトンネルを潜り抜け、AIアートの世界へ到着する。 

 縦長の8Kモニターが並ぶ「AIギャラリー」では、台湾の有名画家たちが描いたアート作品を元にAIがデジタル化して描いた作品とインタラクティブな時間を過ごせる。 

 一つ一つの縦長モニターでは、アート作品が順番に表示され、それを見ているだけでも楽しいが、このモニターに近づいたり、立ち位置を変えたりすると、それに反応してデジタルの絵に描かれている人や動物、植物、乗り物、建物などが動きだしたり、なかった背景が現れたり、と最新技術を体感できる。

 すぐそばまで行って画面を見ても8Kの高精細画面なのでアラもなく細部まで見て取れる。

 それらを通り過ぎてたどり着くのはフューチャー劇場で、そこは「半導体の壁」と呼ばれる場所で、台湾の製造する半導体の凄さを伝えている。 

 スマホや家電、車や航空機など、モノがハイテク化するに従い、より半導体に依存する世界になってきていることを説明し、現在私たちは普段の生活の中で1日に1000個以上の半導体を何らかの形で使用していることを表現している。  

 最後にリストバンド型のデバイスに記録された心拍数のデータを読み取って、3つのテーマのどこで一番心拍数が上がったかをグラフで表示して、自分が何に一番反応したのかを確認できる。 

 鑑賞が終わると最後にギフトを頂け、この日はスイカの絵が描かれたポシェットにピンクの帽子が入っていた。 

 パビリオンの最後は神農生活のギフトショップとカフェがあり、最後まで台湾を楽しめるようになっている。

 TECH WORLDという名称からテクノロジー一択のパビリオンかと思っていたら、最新テクノロジー体験のほか、生命や自然、アートなど様々な要素が散りばめられていて台湾らしい柔らかさも感じた。ただその裏ではしっかりと台湾が誇る最高レベルのテクノロジーが生かされていることも感じられ、現代社会においての台湾の存在価値を再認識させてくれたそんな展示だった。