
細い木材を大量に使って装飾しているフィリピンパビリオンの中は同国の自然と文化が体感できる空間だ。
パビリオンへ入館するため、ドアが開くの待っている際、隣にいた女性と話し始めたところ、なんとこの女性は、目の前にある同館のクリエイティブプロデューサーのChochay Garciaさんだった。入館前から色々と話しを聞くことができ、舞台裏を垣間見ることができた。
同館は、「自然、文化、共同体― よりよい未来をともに織りなす」というテーマを掲げ、フィリピンの豊かな伝統、多様な自然、創造性を表現している。
この際たるものが建物の外観。300キロメートルにも及ぶ伝統的な素材を職人の手で織りこみ、それをフィリピンから運んできたとのこと。このユニークな外観は、多様性の中での統一を象徴しているという。
また、パビリオンは、万博終了後に解体してフィリピンに持ち帰り再利用することが決まっていて、今回会場に来られなかった人にも万博の空気を感じて、少しでも体験を共有してもらいたいという思いがある。

館内に入ると、すぐそこに「ウーブン」と書かれたサインが掲示されているが、ウーブンをそのまま訳すと「織りなす」という意味になる。しかしここでは館内で多用している伝統工芸の織物を「織る」ということと、自然の織りなす世界、また様々なものが織り重なって一つのものを作り上げている、例えば私たちが暮らす世界や社会、と複数の「織りなす」を融合して表現した言葉として使われている。


館内のメインの空間は大きな一つのスペースになっていて、手前に巨大なタペストリーが天井から吊るされている。その奥のスペースでは、AIセンサーを使って、壁の前に立つ人たちに反応したCG映像が投影されていた。


巨大なタペストリーは、フィリピンのルソン、ビナヤ、ミンダナオの3つの島の18の地域を象徴するもので、それぞれの地元の人たちが半年以上かけて手作りで織り上げたもの。この織物の森を巡ると没入型があり、フィリピンに瞬間移動したかのような気分になる。
それぞれに違ったテーマで地域の特徴などをユニークに表現している。丁寧に織られていて、織物技術も素晴らしさが伝わる。使用している素材は、不要になったものを再利用して環境に優しい工夫がなされている。
タペストリーのそばには説明書きも置かれているので、18枚一つ一つ見て回るとフィリピン各地の特徴がよくわかった。

奥の壁に投影されている巨大な映像の前では、AI技術を活用したインタラクティブな体験ができる。双方向スクリーン「Dancing With Nature」の前に立つとカメラがその人物を認識し、植物や魚、食べ物などで表現されたキャラクターが自分の前に現れる。自然のリズムに身を委ねて音楽に合わせて踊ったり跳ねたりすると、動きに合わせてキャラクターが追従するので、やってみるとなかなか楽しい。子どもらは大きな歓声をあげて盛り上がっていた。
登場するキャラクターが魚や植物、食べ物なのは、実際にフィリピンに生息する魚や植物や、採れる食物を使用。同国を「少しでも知ってもらいたい」ということと、背景の映像と合わせて自然を感じて、自然とともに楽しんでもらいたい、という願いがあるそうだ。

ギフトショップへ向かう前に、AIフォトブースで写真を撮影して、事前に用意されたCG画像と組み合わせてオリジナル写真を作成することも可能。専用QRコードを読み取ることで写真のデータをスマホにダウンロードも可能だ。
フィリピンパビリオンは、見応えがあり楽しめるパビリオンだった。