米国経済は堅調にも関わらず、米国株は2月20日からマイナス10%以上下落した。3月13日を底に一旦下落が止まったかのように見えるが、市場は不透明、投資家心理は不安定だという。原因を考察してみた。
今回の株価下落について、3つの想定外、不透明さが主な原因といわれている。
トランプ氏の大統領就任が確実となった昨年11月7日頃からいわゆる「トランプトレード」が始まった。自らを〝関税マン〟と主張する同氏の関税政策は、再インフレや貿易摩擦の懸念があったものの、メキシコやカナダから流入する薬物の取り締まりが条件であったりと、あくまでディール(取引)としての関税政策であることが市場を安心させた。加えて、もともと同氏は、「株価にフレンドリーな大統領」といわれていたのもある。
しかし最近では朝令暮改、まさに朝に関税発言をしたかと思いきや、夕方には変更といったようにコロコロ変わる関税政策に市場は振り回され、就任から上昇していた株価の巻き戻しが起こった。加えて、イーロンマスク氏率いるドージ(政府効率化省)による対外援助機関のUSAID(アメリカ国際開発庁)職員の大量解雇や閉鎖問題だ。関係者の反感だけでなく、同国民の消費マインドまで低下していった。欧米ではマスク氏が経営するテスラ車への放火や不買運動が起こっているほどだ。また、米財務長官ベンセント氏の「我々は政府支出に病みつきになっていた。この先はデトックスの期間になる」の発言に景気減速を示唆しているのではないか、また、今回のトランプ米政権は「株価にフレンドリーでない」という認識が広がったためだ。
ここまでが今回の株価下落の要因となった、3つの想定外だ。
①トランプ氏の変化(ビジネスマン→政治家へ)。トランプトレードの巻き戻し
②マスク氏の政治的な発言、政府の無駄削減期待から存在を脅かす存在へ
③ベンセント氏のデトックス発言。景気減速の不安
これから株価は下落し続けるのか、それともただの調整なのか。未来は誰にもわからない。では、過去の下落局面と照らし合わせてみよう。米代表指数のS&P500の下落局面は、年平均で5%下落が3回、10%以上の調整は1回発生している。中でも20%以上の下落はまれといわれている。今回の下落はちょうど、10%だ。そして、現在のような調整局面から「弱気相場」へ突入する確率は約2割程度、コロナやリーマンショック級の大きなショックへの移行確率は1割以下だという。
米中央銀行(FRB)のパウエル議長は、現在の米国経済を堅調だという。米財務長官ベンセント氏のデトックス発言についても、「景気がよいときだからこそ、財政健全化を優先している」という。多少、株価の調整があるかもしれないが、長期的な経済成長に向けてのことであり、実現すれば株価はおのずと上昇すると言っていた。